与党税制改正大綱が決定、「年収の壁」など多数派形成強く意識
国会議事堂。10月21日撮影。REUTERS/Manami Yamada
Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto
[東京 19日 ロイター] - 自民党と日本維新の会は19日、2026年度の与党税制改正大綱を決定した。防衛財源確保のため27年1月から所得税額の1%を新たに徴収すると決める一方、「年収の壁」の178万円までの引き上げや自動車取得時に課税される「環境性能割」の廃止など国民民主党の主張も採用。少数与党として臨む来年度税制改正や当初予算編成に向けた国会の多数派形成を強く意識した内容となった。
<防衛増税の時期決定>
大綱には防衛力強化のため、所得税額に対して1%を付加する「防衛特別所得税(仮称)」を27年1月から徴収すると明記。同時に既存の復興特別所得税率を1%下げ、家計の負担は当面据え置かれる設計とした。ただ、37年までとされている復興所得税の課税期間は10年間延ばす。
防衛増税をめぐっては岸田文雄政権下の22年に方針が決まる一方、国民の反発を懸念して所得税額1%分の増税時期はこれまで2年連続で決定が先送りされていた。
<国民民主の主張広く採用>
所得税の非課税枠を拡大する「年収103万円の壁」問題については、高市早苗首相(自民党総裁)と国民民主の玉木雄一郎代表が18日に国会内で会談し、課税最低限を178万円とすることで合意。給与収入665万円までは基礎控除額が大きく引き上げられ、それよりも所得の高い人の控除額も積み増す。
財務省はこれにより年6500億円の減税につながると試算しているが、27年までの時限措置とし、玉木氏は「給付付き税額控除」など根本的な制度改正の検討を続ける考えを示している。減税分は税収上振れの範囲内に収まっているとし、「このことがマーケットに影響を与えることはないと思う」とも述べた。
自動車や軽自動車の取得時に課税される地方税「環境性能割」も、国民民主の主張に沿って恒久的に廃止する。高市氏が今年の自民党総裁選期間中、2年間に限って停止する考えを示していたが、より踏み込んだ形だ。総務省は今年度約1900億円の税収を見込んでいる。大綱では「国内自動車市場の活性化を速やかに図るとともに、自動車ユーザーの取得時における負担を軽減、簡素化するため、26年3月31日をもって廃止する」とした。
<「高市カラー」や維新の要望反映も>
企業の設備投資を促すため、一定の条件を満たす投資を行った企業に対し最大で投資額の7%(建物などは4%)を法人税額から控除する制度も設ける。投資額は大企業で35億円以上、中小企業で5億円以上を条件とし、投資利益率15%超の案件を対象とするなどの規定がある。業種は限定しない。一括で減価償却費を計上する「即時償却」も選択できる。
米国による追加関税の影響を考慮し、「輸出入取引に係る条件の著しい変化など事業環境の急激な変化による影響への対応を行うための計画の認定を受けた事業者については、最大3年間の繰越税額控除を可能とする」とも明記した。
「資産運用立国」に向けた取り組みではNISA(少額投資非課税制度)の年齢制限を撤廃し、0歳から「つみたて投資枠」が利用できるようにする。子どもが12歳になれば親が積立金を引き出せる仕組みで、年間60万円、総額600万円を上限とする。
連立を組む維新の意向を反映する形で、高校生年代(16―18歳)の子どもがいる親の扶養控除は現状維持とする。自民内には控除額を引き下げる案もあったが、高市氏と維新の吉村洋文代表(大阪府知事)が16日に会談し、維持に向けて調整することで合意していた。
自民、維新両党は19日、記者会見を開いて大綱を発表した。自民の小野寺五典税制調査会長は「物価高への対応や強い経済の実現など重要な課題にしっかり取り組める内容になった」と説明。維新の梅村聡税調会長は「国民のために少しでも良い税制が作れるように我々なりにしっかり努力した。与党一体でこれからも頑張っていきたい」と述べた。
財源確保について記者団から問われると、小野寺氏は「すべて(財源を)確保できているわけではないが、これから次の税制改正に向けてそこはしっかり踏まえながら議論していきたい」と述べた。
(鬼原民幸、竹本能文 グラフィックス作成:田中志保 編集:石田仁志)





