日銀総裁、中立金利の推計値下限まで「少し距離ある」 利上げ継続姿勢
12月19日、日銀本店で撮影。REUTERS/Manami Yamada
Kentaro Sugiyama Takahiko Wada
[東京 19日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は19日、金融政策決定会合後の会見で、現在の実質金利はきわめて低い水準にあるとの認識を示し、今後も日銀が示している経済・物価の見通しが実現していけば、引き続き政策金利を引き上げていくことになると述べた。ターミナルレート(金利の到達点)を考慮するうえで意識される中立金利について、推計値の下限までには「少し距離がある」とも語った。
植田総裁は「先行きの金利パスや金融緩和の度合いを調整するペースは、今後の経済、物価、金融情勢次第であり、毎回の決定会合で経済・物価の見通しやリスク、見通し実現の確度をアップデートしながら適切に判断していく」と語った。
中立金利の推計値については、相当なばらつきがあり、かなりの幅を持ってみる必要があると指摘。「今後とも短期金利の変化に対する経済、物価の反応を点検し、中立金利の水準を探りながら、金融緩和の度合いを調整していくことが適当だ」と述べた。
金融緩和度合いの評価には、短期金利と中立金利の関係だけでなく、実質金利の水準や貸し出しの動向などを含め、総合的に判断していく必要があるとも語った。
<政策金利、30年ぶり高水準に>
日銀は18、19日に開催した決定会合で、政策金利を0.75%程度に引き上げることを全員一致で決めた。利上げは1月以来。政策金利は1995年9月以来、30年ぶりの高水準となった。
植田総裁は利上げを決定した背景について、米国経済の下振れリスクは低下していると指摘。懸念された米関税措置の国内経済への影響も、全体に波及している様子はうかがわれないと説明した。
動向を見極めたいとしていた春季労使交渉(春闘)の「初動のモメンタム」についても、労使の対応方針や日銀の本支店を通じたヒアリング情報などを踏まえると、来年もしっかりした賃上げが実施される可能性が高く、「企業の積極的な賃金設定行動が途切れるリスクは低い」とみられるという。
総裁は「賃金と物価がともに緩やかに上昇していくメカニズムが維持される可能性が高い」との見方を示した。
債券市場では、日銀の利上げ発表後に金利が上昇。新発10年債利回り(長期金利)は2.020%と、1999年8月以来の高水準をつけた。外為市場は円安方向に反応。ドルは156円半ばまで上昇した。
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