最新記事

コロナ特効薬を探せ

アビガンも期待薄? コロナに本当に効く薬はあるのか

CAN EXISTING DRUGS WORK?

2020年5月20日(水)11時40分
ニューズウィーク日本版編集部

カレトラ(一般名ロピナビル・リトナビル)

Lopinavir/Ritonavir
抗HIV薬

magSR20200520existingdrugs-6.jpg

SCIENCE PHOTO LIBRARY/AFLO

カレトラは、ロピナビルとリトナビルという2種類の抗HIV薬の混合薬。日本でも新型コロナウイルス感染者に早期から使用されており、中国やインド、オーストラリアなどでも用いられている。

プロテアーゼ阻害剤(タンパク質分解酵素を妨げる物質)に分類され、ウイルスの転写・複製を可能にする酵素を阻害する働きを持つ。先行研究では、同じくコロナウイルスによって引き起こされるSARSについてもウイルス増幅抑制に効果が見られたと報告されている。

1月中旬から新型コロナウイルス感染者への臨床試験が行われた中国では、医療機関で抗HIV薬が使用されたという報道を受け、在庫を手に入れようと闇市場でのパニック買いが起きた。

オーストラリアのクイーンズランド大学臨床研究センター長のデービッド・パターソンは、「(オーストラリア国内での)中国人感染者の第一波の治療には、この薬が大変よく効いた」と話している。

一方で、3月に有力医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンに発表された論文は、新型コロナウイルスの重症患者に対して、「ロピナビル・リトナビル投与に標準治療を上回る利益は認められなかった」と結論付けている。

回復者血漿

Convalescent plasma
感染症治療

magSR20200520existingdrugs-7.jpg

LINDSEY WASSON-REUTERS

米ニューヨーク州で7500人を対象にして4月末に行われた新型コロナウイルスの抗体検査では、14 . 9%で抗体が確認された。ニューヨーク市内では24.7%と、想定を上回る4人に1人が既に新型コロナウイルスに感染していたことになる。

そこで研究者たちに有望視されているのが、回復者血漿(けっしょう)を用いた治療法だ。感染症から回復した人の血液の一部を、患者に投与する手法で、回復した人が獲得したウイルスに対する抗体を、患者の体内で作用させる仕組みだ。

この治療法はこれまで、おたふく風邪や麻疹(はしか)、インフルエンザを含むさまざまな感染症の流行の際に用いられてきたが、新型コロナウイルスでの効果はまだ証明されていない。

FDAは最新のガイドラインで、回復者血漿を臨床試験で限定的に用いることを認めているが、「重症、あるいはただちに生死に関わる状況の新型コロナウイルス感染者」のみが対象になるとしている。

ニューヨーク市などで既に臨床試験が行われ、回復者からの血液の提供も進んでいるが、抗体が十分に出来上がっているか、他の感染症に感染していないかなどを綿密に調査して使用する必要があり、手順は複雑だ。

<2020年5月26日号「コロナ特効薬を探せ」特集より>

20200526issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年5月26日号(5月19日発売)は「コロナ特効薬を探せ」特集。世界で30万人の命を奪った新型コロナウイルス。この闘いを制する治療薬とワクチン開発の最前線をルポ。 PLUS レムデジビル、アビガン、カレトラ......コロナに効く既存薬は?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金与正氏、日米韓の軍事訓練けん制 対抗措置

ワールド

ネパール、暫定首相にカルキ元最高裁長官 来年3月総

ワールド

ルイジアナ州に州兵1000人派遣か、国防総省が計画

ワールド

中国軍、南シナ海巡りフィリピンけん制 日米比が合同
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で最も「火山が多い国」はどこ?
  • 9
    村上春樹は「どの作品」から読むのが正解? 最初の1…
  • 10
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 8
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中