最新記事

コロナ特効薬を探せ

アビガンも期待薄? コロナに本当に効く薬はあるのか

CAN EXISTING DRUGS WORK?

2020年5月20日(水)11時40分
ニューズウィーク日本版編集部

ヒドロキシクロロキン

Hydroxychloroquine
抗マラリア薬

magSR20200520existingdrugs-4.jpg

CHRISTOPHER OCCHICONE-BLOOMBERG/GETTY IMAGES

「消毒液を注射する」「体内に日光を照射する」など驚愕の治療法を提言して混乱を引き起こしたドナルド・トランプ米大統領が「画期的な薬だ」と繰り返し発言しているのがヒドロキシクロロキン。

抗炎症作用や免疫調整作用を持つため、関連薬のクロロキンと共にマラリアや全身性エリテマトーデス(SLE)などの治療に使用されてきた。

新型コロナウイルスに関しても、体内の免疫反応に効果を及ぼす可能性があるとしてアメリカの多くの医療機関で最前線の治療法として用いられてきた。FDAは3月末、全米の病院に数百万回分を配布することを承認した。

だが4月下旬、FDAはヒドロキシクロロキンをコロナ治療に用いると深刻な副作用をもたらす可能性があると警告。複数の先行研究を調査したマサチューセッツ総合病院ワクチン免疫治療センター長のマーク・ポズナンスキーも同月、効果を示す明確なデータはないと結論付けた。

さらにポズナンスキーは「有害となる可能性もある」と指摘し、抗生物質アジスロマイシンなど他の薬と併用した場合、治療1カ月以内に胸痛や心不全のリスクが15~20%上がり、心疾患で死亡するリスクも倍増するとしている。

レロンリマブ

Leronlimab
乳癌治療薬

magSR20200520existingdrugs-5.jpg

COURTESY OF CYTODYN

悪性度が高いとされるトリプルネガティブ乳癌の治療薬や、抗HIV薬としてFDAから迅速審査の対象に指定されているレロンリマブが、新型コロナウイルス感染症の治療に転用できるかもしれない。

この薬を開発したバイオテクノロジー企業サイトダインはFDAの認可を受けて4月、新型コロナウイルス感染者を対象とした臨床試験を開始した。

研究者らは、重度の新型コロナウイルス感染者に見られる、免疫システムが過剰反応を起こす危険な現象「サイトカインストーム」に対し、レロンリマブが効果を発揮する可能性があると考えている。

既にニューヨークで15人の重症患者に投与され、良好な結果が出ているとサイトダインは発表。「患者は1人1人異なる合併症を併発していたが、レロンリマブの投与では似たような臨床反応を示しており、これこそがこの薬の作用メカニズムだと考えている」という。

HIVやトリプルネガティブ乳癌に対して行われたこれまでの臨床試験では、レロンリマブが下痢や頭痛、リンパ節の腫れ、高血圧、注入部位への局所反応などの副作用を及ぼす可能性が指摘されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

COP30が閉幕、災害対策資金3倍に 脱化石燃料に

ワールド

G20首脳会議が開幕、米国抜きで首脳宣言採択 トラ

ワールド

アングル:富の世襲続くイタリア、低い相続税が「特権

ワールド

アングル:石炭依存の東南アジア、長期電力購入契約が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中