最新記事

AI時代の英語学習

英語学習は不要になる? どんな能力が必要に? 機械翻訳の第一人者に聞いた

2020年2月26日(水)14時10分
高木由美子(本誌記者)

――今後は、例えばさまざまな分野の英単語を地道に覚える、などの作業はもういらなくなる?

今の自動翻訳システムなら専門用語もかなりカバーしているので、専門用語は機械に任せていいかもしれない。むしろ、解釈を間違っている可能性はあるので、人間は入力文を正しく理解してチェックできなければならない。そのためには、国語力や基本的な英語力が必要になる。

――人間には編集力が必要になるということ?

最終の生成物を作るのは人間で、チェックするというのは人間の高度な処理能力。翻訳をコンピューターにやらせて、それを参考にして、もっといい文章にする、チェックする、など高度なことを人間がやればいい。

――効果的に機械翻訳を活用する方法は。

自動翻訳の間違いに気付くために、日本語から外国語に訳したものをまた日本語に訳し直す、というやり方がある。この(逆翻訳の)プロセスを入れると、ミャンマー語など全く知らない言語でも使いこなすことができる。また、日本語を英語に機械翻訳するときには、不自然でもちゃんと主語を入れてから入力するなどの工夫が必要だ。

――自動翻訳が活用できるなら、今後はどんな学習が必要になるのか。

根本的に、英語の機械翻訳を利用したいのなら英語の文法をちゃんと勉強して、英語のことを分かっている状態で使わなければいけない。機械を使って作業を効率化しても、チェックしたり判断したりするのは自分でしなければ。

対面のコミュニケーションで、間違ったことを言ったら相手の表情で気付いてやり直しができるような状況ならまだいい。外部に向けて文書を発表するような、誤れば取り返しがつかないような状況では、ちゃんと利用者本人かプロの翻訳者が、機械翻訳の文章をチェックしなければならない。

機械翻訳を仕事で使いたい状況なら、自分の英語力はちゃんと鍛えておいたほうがいい。

また、語学の知識を持ち、自動翻訳を使って語学を克服しても、まだ必要なのは異文化理解力。失礼に当たらない話の進め方など、言葉の先には文化の問題がある。外国人と仕事をするならそこまで理解しておかなければならない。

――英語能力を今以上に上げる必要はあるか?

英語のレベルの上げ方も、「単語をたくさん覚える」「たくさん文を書ける」などいろいろあるだろうが、これまでとは違う能力のほうが重要になるかもしれない。面倒な作業は機械にやらせて、よりクリエイティブな部分を人間が担えばいい。

▼インタビュー前編:すでにTOEIC960点越え、日本の第一人者に「国産」機械翻訳について聞いた

20200303issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年3月3日号(2月26日発売)は「AI時代の英語学習」特集。自動翻訳(機械翻訳)はどこまで使えるのか? AI翻訳・通訳を使いこなすのに必要な英語力とは? ロッシェル・カップによる、AIも間違える「交渉英語」文例集も収録。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中