最新記事

日本人が知らない 仮想通貨の闇

ICO詐欺から逃れるには? 日本人が知らない仮想通貨の闇

2018年2月6日(火)15時40分
ジェシカ・バースティーグ(パラゴンCEO)

Illustration by Valery Bronzhinsky-iStock./Getty Images

<ICO(仮想通貨を活用した資金調達)には怪しい投資話も多く、問題視する声が大きくなってきた。うま過ぎる話には裏がある。ICO詐欺を避ける最低限の注意事項とは>

仮想通貨の発行・管理に使われるブロックチェーンの技術は大きな可能性を秘めている(筆者はいちおう、その道のプロだ)。しかし過剰な期待が独り歩きしてもいる。だから要注意。この新規事業は大きく育ちますよ、今のうちに仮想通貨で投資しませんか。そんな誘いが舞い込んだら、返事をする前にこの記事を一読してほしい。

いわゆるICO(仮想通貨を活用した資金調達)に関して、まず考えるべきは「この事業には本当にブロックチェーンの技術や独自のトークン(代用貨幣)が必要なのか」。答えが「ノー」なら、そのICOは「とにかく仮想通貨を使いたい」だけのプロジェクトか、さもなければ詐欺。以下はだまされないための最低限の注意事項だ。

相手が匿名の場合

どんなICOにおいてもそうだが、重要なのは「誰がやっているか」だ。検証可能で十分な実績を持つ人が関与していれば、詐欺の可能性は低い。

逆に、常勤の事業担当者名が公表されていないプロジェクトはNG。名前が出ていても、その道のプロと客観的に判断できる人物がいない場合は、やはり手を出さないに限る。

事業者側の実績を検証するにはリンクトインやツイッターなどが役立つが、これらも絶対に確実ではない。プロフィールも経歴も、でっち上げの可能性がある。過去に在籍した大学や企業の名が出ていても、念のためにダブルチェックをしたほうがいい。

またホワイトペーパー(有価証券の目論見書のようなもの)には偉そうな「顧問」の名が並んでいるものだが、これも本物かどうかチェックすべきだ。

ウェブサイトやホワイトペーパーの情報が足りない場合

情報が足りず、少しでも疑問がある場合は慎重の上にも慎重に。ウェブサイトがお粗末だとか、プロジェクトがまだ初期段階でホワイトペーパーに詳しい情報を載せられない場合もあるだろうが、そうしたやむを得ない事情と意図的な情報隠しを見分けるのは不可能に近い。大抵は、どちらの可能性も考えられるからだ。

従って、投資家としては十分な情報が出るのを待つか(例えばアジアを拠点に行われるICOの場合、情報の英訳に時間がかかる場合もある)、あるいは手を引くかだ。

いずれにせよ、理解できないものには手を出さないこと。プロのベンチャーキャピタルが企業や新規プロジェクトへの投資を検討する場合は、徹底して目論見書を精査する。情報が足りなければ投資はしない。

そもそもホワイトペーパーは、当該事業のミッションに始まって技術面の詳細までを網羅した最も重要な文書だ。一般の投資家には理解しにくい部分もあるだろう。それでも仮想通貨への投資を検討する人は、ブロックチェーンの技術に関する最低限の知識は必要不可欠だ。


180213cover-150.jpg<ニューズウィーク日本版2月6日発売号(2018年2月13日号)は「日本人が知らない 仮想通貨の闇」特集。コインチェックでのNEM巨額流出騒ぎは氷山の一角。ICO詐欺から、テザー疑惑、量子コンピューターまで、「理想の通貨」になお潜む難題とリスクに迫った。この記事は特集より抜粋>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

過度な為替変動に警戒、リスク監視が重要=加藤財務相

ワールド

アングル:ベトナムで対中感情が軟化、SNSの影響強

ビジネス

S&P、フランスを「Aプラス」に格下げ 財政再建遅

ワールド

中国により厳格な姿勢を、米財務長官がIMFと世銀に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 2
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 3
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過去最高水準に
  • 4
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 5
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 7
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 8
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 9
    ビーチを楽しむ観光客のもとにサメの大群...ショッキ…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「リンゴの生産量」が多い国…
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 4
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 5
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 6
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 10
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中