安心安全な再生可能エネルギーによる「電力の地産地消」を目指せ...伝統文化も守るNO NAMEの挑戦
「脱原発」でも注目される太陽光発電。再エネの主軸である太陽光発電の普及が進むことは脱原発に大きく近づくことを意味する
<東日本大震災の復興支援で見た光景が、人の手で制御可能なエネルギー普及への熱い思いを駆り立てた>
日本企業のたとえ小さな取り組みであっても、メディアが広く伝えていけば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。そのような発信の場をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版が立ち上げた「SDGsアワード」は今年、3年目を迎えました。
私たちは今年も、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
2011年の東日本大震災は、日本社会に多大な影響を及ぼした。津波による壊滅的な被害に加え、原子力発電所の事故は「目に見えない恐怖」をもたらし、エネルギーに対する国民の意識を大きく変えた。被災地では通信・電力インフラの寸断が深刻化し、多くの人が家族と連絡が取れない不安に苛まれた。
そのような光景を目の当たりにし、人の手で制御、管理できる、環境にやさしいエネルギーの普及にさらに尽力するようになった企業がある。株式会社NO NAMEだ。
震災で目にした光景が再エネへの熱い思いの源に
愛知県名古屋市に本社を置くNO NAMEは、太陽光発電所建設工事および発電所メンテナンスを中心に、土木工事、電気工事、水道設備工事、通信設備工事など、幅広く手掛ける企業だ。
再生可能エネルギー分野に参入したのは2012年のことだが、そのきっかけは、震災発生の翌々日、安間信裕代表取締役が社員や協力会社30名とともに現地入りした時の経験だった。
同社は仮設の携帯基地局設置を担当しており、放射線の不安や余震が続く中で復旧作業に奔走し、電波が通じたときの被災者の安堵の表情が強く心に刻まれたという。この経験から、安心安全なエネルギーの重要性を痛感。原子力に頼らず、制御可能で地域に優しいエネルギーの必要性を強く認識したことが、再生可能エネルギー分野への進出の大きな後押しとなった。
再生可能エネルギー分野に参入した当初は、大手事業者の下請けとして設計や施工を学ぶ立場にあったが、現在は今までに培った豊富な知識と施工実績を武器に、安心安全な太陽光発電設備と系統用蓄電池の提案工事を行うまでに成長を遂げた。自然との共生と地域社会との調和を重視した事業を展開している。
事業展開に際しては、環境に配慮したクリーンエネルギーの創出と生態系と地域環境、景観に配慮した事業計画の作成を心がけているという。また、再エネ設備の設置が地域の暮らしや自然に与える影響を常に意識しながら、実効性あるCO₂削減計画も併せて提案している。

NO NAME最大の特徴は、単なる設備導入にとどまらず、自社で使う電気、自分で使う電気を自分たちで作って賢く使用する仕組みを提案するなどして、地産地消のエネルギー循環を地域に根付かせる取り組みにある。
例えば、事業所の屋根上や駐車場、遊休地(利用されずに放置されている土地)といった既存の空間を活用して再エネを導入することで、土地資源を有効活用しながら発電を実現している。
また、農地の上部空間に太陽光パネルを設置し農業と発電を両立させるソーラーシェアリングや、耕作放棄地の農地転用といった革新的な手法の導入を通じて、自然と調和した脱炭素社会の実現を目指している。






