最新記事
SDGsパートナー

放置竹林から建材へ──竹が拓く新しい建築の可能性...日建ハウジングシステムの革新

2024年11月25日(月)13時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー
竹を用いた大阪オフィスのインテリア

竹を用いた大阪オフィスのインテリア

<強度と成長速度に優れた「竹」を建材として活用する研究を進める株式会社日建ハウジングシステム。放置竹林問題の解決と脱炭素社会の推進を目指したこのプロジェクトは、竹を次世代の建築資材として再評価する取り組みとして注目を集めている>

世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや商品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えに基づいてニューズウィーク日本版は昨年に「SDGsアワード」を立ち上げ、今年で2年目を迎えました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。

◇ ◇ ◇

日本人にとって身近な「竹」は、日用品や家具の材料として古くから利用されてきた。しかし、安価な輸入竹やプラスチックの普及により、国産竹の需要は減少。各地の竹林は放置されるようになり、この「放置竹林」問題が深刻化している。

竹林は地表の土をとどめる力が弱く、斜面では大規模な土砂崩れの原因となる。また、樹木と比べて成長が早いため、周辺の生態系に悪影響を及ぼす可能性も指摘されている。現在の日本では、衛星画像で確認できるほど放置竹林の面積が拡大している。

こうした課題を前に、竹を「持続可能な建材」として再評価し、建築構造材としての可能性を拓いているのが株式会社日建ハウジングシステムだ。

強度と持続可能性を両立した「竹集成材」

日建ハウジングシステムは、都市型集合住宅の企画・設計・監理および調査研究の専門家として、さまざまな集合住宅の設計を手掛けてきた。2016年には「住空間の未来」を研究・立案するためのlid(life innovative design)研究所を立ち上げた。

このlid研究所が推進するプロジェクトの一つであり、現在、国内外で注目を集めているのが「竹集成材構造プロジェクト」だ。

竹は、高い強度としなやかさ、弾力性を兼ね備えており、建材としてのポテンシャルが極めて高い。しかし、日本の法律では竹が建材として定義されていないため、そのままの形で使用することはできなかった。

そこでlid研究所は、鹿児島大学や株式会社ハフニアムアーキテクツと共同で竹集成材を建築構造材として活用するための開発に乗り出した。集成材とは、複数の板を貼り合わせて高い強度を持たせた建材である。

2年間にわたる試行錯誤の末、2023年、竹集成材構造プロジェクトは日本建築センターの性能評価書を取得。これにより、「竹が建築構造材として使用可能である」ことが正式に認められた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

マスク氏、FRBへDOGEチーム派遣を検討=報道

ワールド

英住宅ローン融資、3月は4年ぶり大幅増 優遇税制の

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる

ビジネス

アルコア、第2四半期の受注は好調 関税の影響まだ見
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中