フィールドワークもzoomで済む時代に...国立民族学博物館教授が文化人類学で伝えようとすること【民博特集4/4】
なるほど。民博本館展示の「日本の文化」展示場には、日本に住む様々な移民の暮らしを紹介している一角がある。他にも戦禍を逃れてきた難民の移動を伝える展示もある。
「コミュニティの関係性の研究ですか。それって、民族学が社会学に接近しているような印象を持ちました。止めようのない時代の流れ、変化のなかで、先生はこれからの民族学や文化人類学をどう捉えますか?」
変わりゆく世界を後世に伝える
「まあぼくなんかは、自分が書いた黒タイ族の民族誌なんかを、ぼくにたくさんのことを教えてくれた人らの孫や、もっと下の世代の人が読んで、昔の黒タイ族のくらしってこんなんやったんやな、と知って楽しんでくれたら嬉しいなあ。そんなロマンチシズムですね」
ふと、かつて鎖国していた日本にやって来た外国人宣教師たちの存在を想像した。彼らが書き残した記録をいまの日本人である自分が読んで、いろんなことを知り、感じる。その「おもしろいなあ」という感覚。
先生は消えゆく文化、あるいは変わりゆく文化人類学の記録者としての役割を果たしていく。知るとは、残すこと。変わりゆく世界を後世に伝える。
ミンパクチャン[著者]
ルポライター 市井の国立民族学博物館ファン。
樫永真佐夫[監修者]
国立民族学博物館教授/文化人類学者 1971年兵庫県生まれ。2001年東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。2010年、第6回日本学術振興会賞受賞。著書に『道を歩けば、神話 ベトナム・ラオス つながりの民族誌』『殴り合いの文化史』(左右社)他多数。2023年より『月刊みんぱく』編集長。ボクシング、釣り、イラスト、料理など、いろいろする変人二十面相。
『変わり者たちの秘密基地 国立民族学博物館』
樫永真佐夫[監修]
ミンパクチャン[著]
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