20円の物を収蔵し、100万円の物を収蔵しない? 国立民族学博物館の収蔵庫で考えた「物の価値」とは【民博特集3/4】
「物の履歴がわかるということが大事なんです。物の履歴に物語があって、その物語に価値が生まれるんですね。民博では、資料の情報をデータベース化して管理しています。それでも、すでに退職した教員(研究者)によって収集されたものなど、資料の情報が追えないこともしばしばあります。その当時は当たり前だった物でも、どんどんなくなっていくんです。当時はみんなわかっているので、ちゃんと記録していなかったりします。するともう追えなくなっちゃうんですね」
物の価値とは何か? 歴史学の鈴木英明先生が言っていたことを思い出した。「歴史では、普通に生きている人のことっていちばんわかりづらいんですよ」。人だけではない。人が使う物も同じだ。普通の物ほど後世に残らない。宝物と違って大事にされないから、忘れられていく。考えさせられる話である。
民博では年度による変動が大きいが、2024年度は500点ほどの資料を受け入れた。コレクションを引き取る機会が多い年は点数が多くなる。研究予算の削減などもあって、近年では研究者が調査で収集してくる資料の数は減っている。
ミンパクチャン[著者]
ルポライター 市井の国立民族学博物館ファン。
樫永真佐夫[監修者]
国立民族学博物館教授/文化人類学者 1971年兵庫県生まれ。2001年東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。2010年、第6回日本学術振興会賞受賞。著書に『道を歩けば、神話 ベトナム・ラオス つながりの民族誌』『殴り合いの文化史』(左右社)他多数。2023年より『月刊みんぱく』編集長。ボクシング、釣り、イラスト、料理など、いろいろする変人二十面相。
『変わり者たちの秘密基地 国立民族学博物館』
樫永真佐夫[監修]
ミンパクチャン[著]
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