まるで落語「なんでこんなモノ持ってきた?」...変わり者たちの秘密基地、国立民族学博物館の舞台裏【民博特集1/4】
「音楽」展示場に行けば、世界の太鼓、世界のギターのブツ量に圧倒され、人はなぜ歌ったり踊ったりするんだろうと考えさせられる。また、バリ島の魔女・ランダ様(本書カバーにも登場!)と聖獣バロンは、写真にも映えてとりわけ大人気だが、その迫力たっぷりの姿に「また来たよ」と挨拶したくなる。
そして、森の奥からやって来たハイエナだというザンビアの巨大なニャウ・ヨレンバ。その展示パネルに「仮面」と書いてあるのを見るたび、「仮面というか、着ぐるみやん......」と毎度つっこんでしまう。ルーマニアの「陽気な墓」に刻まれた、その人の生前の姿とキャッチーな紹介文を読んでいると、自分も死んだらあんなふうに面白おかしく紹介されたい、と思う。
とにかくいろんな物がある。が、持ってくるとき苦労はないのだろうか? 「東南アジア」展示場に建立された上座部仏教の寺院を見ながら、つい思いを馳せた。こんな重そうな台座、いったいどうやって運んできたんや?
とうとう船を買っちゃった研究者
インド洋の交易を研究している鈴木英明先生は、最近船を買い、民博に持ってきたという。ムテペと呼ばれアラビア海やインド洋で活躍した伝統的な帆船であるダウ船の一種で、釘を使わずにつくる縫合船だ。コンテナに入るギリギリの大きさだが、5メートルほどの小さな船である。鈴木先生はカタログを見せながら説明してくれた。
「ここに載っているのが、東アフリカの海岸沿いで活躍していたムテペです。普通の船よりは平たくつくられています。東アフリカの沿岸部にはマングローブがたくさん生い茂っていて浅瀬になっているから、そこに突っかからないようにしてあるんです」
説明する鈴木先生は、よほどダウ船が好きらしい。うっとりとした表情で雄弁に語る。
「それで、とうとう買ったんですよ、船を。本当は展示のために買ったんですが、到着が間に合わず、ですね......いまはようやく着きました。収蔵庫にあります」