博物館や美術館をうまく楽しめない人は...国立民族学博物館に学んだ「わからなさ」こそ展示も人生も楽しむ秘訣【民博特集2/4】
ガラスケースに入れない展示
民博の本館展示(いわゆる常設展)には、世界中から集められた生活道具や民族衣装、儀式のための道具が約1万2000点展示されています。展示場を1周すると約5キロあります。公式のパンフレットに見学時間として1時間半と書いてありますが、歩いても歩いても、終わらない。にわか勢でも2時間、ガチ勢なら2日間はかかると思います。油断していたら閉館時間になって、最後は駆け足で展示場を出た、なんて声も多数あるほどです。
民博が個性的なのは、圧倒的なブツ量もさることながら、モノの大部分が「剥き出し」で展示されていることです。ガラスケースに入れない「露出展示」です。これには梅棹忠夫さんの強いこだわりがあったそうです。民博の名誉教授で現在は千里文化財団の専務理事を務める久保正敏先生が教えてくださいました。
「展示されている物をね、見てるだけではわからへんやないか、というわけです。触ってみぃ、重さを量ってみぃ、なんなら匂いも嗅いでみぃ、と言わはった。そしたら、ちょっとぐらい、その物のコンテクストがわかるやんか」(同書216ページ)
露出展示には技術的な困難も伴ったそうですが、黒い壁に浮かび上がるように見える無数の仮面の展示など、まるで宙に浮いているかのようで、独特の空間を創り出しています。
展示パネルの文字ばかり読まずにモノを見よ
展示場には、モノとそれに向き合う「個」だけが存在します。展示場で気になったモノと向き合うのは、驚くほど内省的な時間です。他の人がどう感じているかは関係ありません。そのモノの前で立ち止まりたいと思えば立ち止まる。素通りしたければ素通りする。





