博物館や美術館をうまく楽しめない人は...国立民族学博物館に学んだ「わからなさ」こそ展示も人生も楽しむ秘訣【民博特集2/4】

博物館に来ても、ついSNS映えばかり意識してしまう
<「わからなさ」こそが、思考を深め、豊かな時間を創ってくれる。すぐに正解を求めてしまう日常に疲れたら...秋は博物館へ行こう>
博物館や美術館に出かけても、「何を見ればいいのかわからない」「どう楽しめばいいのか戸惑ってしまう」という経験をする人は少なくない。しかし、その「わからなさ」や「戸惑い」こそが、博物館を楽しむためのスパイスになる。
ヒントは『変わり者たちの秘密基地 国立民族学博物館』(樫永真佐夫 監修、ミンパクチャン 著、CEメディアハウス)にあった。70年万博の跡地にある世界最大級の民族学・文化人類学の博物館を舞台に、博物館展示のつくり方や、収蔵庫の秘密、「中のひと」である研究者たちの素顔をユーモラスに描く人間ドラマだ。
国立民族学博物館(通称「民博(みんぱく)」に魅せられたルポライターで、同書の著者であるミンパクチャン氏に、民博を例に誰でも取り入れられる博物館の楽しみかたを訊いた。
■文化人類学の聖地「国立民族学博物館」全4回:[1]/[2](本記事)/[3][4]※明日公開
未知との遭遇! 正解などわかるはずがない
博物館で感じる覚束なさの正体は、「正しい見かたをしなければならない」という思い込みにあります。初めて見るモノや作品と正面から向き合う。それって「未知との遭遇」なんです。まずはびっくり「なんじゃこりゃー!!!」で当たり前。なんですが、つい「自分は正しく鑑賞できているのだろうか」と正しくあろうとして不安になってしまうんですね。
そんな方にお伝えしたいのが、民博の初代館長・梅棹忠夫さんの言葉です。民族学者で情報学者、今なら一流のイノベーターなんて言われたんじゃないかな。『変わり者たちの秘密基地 国立民族学博物館』に詳しく書きましたが、梅棹さんは、民博創設にあたって、様々な画期的な工夫をしました。たとえば、ミュージアムショップ。これを日本で最初に導入したり、当時としては画期的だった映像アーカイブを設置したりしました。