最新記事
ガン

東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」

2025年8月28日(木)16時57分
工藤進英(昭和医科大学横浜市北部病院消化器センター長、同大医学部特任教授)*PRESIDENT Onlineからの転載
東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」

CGN089 -shutterstock-

<日本人に増え続ける大腸がん。その一方で、地域によって罹患や死亡率には大きな差がある。最新の研究と現場の取り組みから見えてきた、食生活だけでは語れない新たな要因と、改善へのヒント>

なぜ大腸がんになる日本人が増えているのか。昭和医科大学の工藤進英特任教授は「食生活が欧米化したことを要因とする調査結果はたくさんあるが、実はほかにも要因がありそうだ」という――。

※本稿は、工藤進英『大腸がんで死んではいけない 「神の手」ドクターが教える最新治療法』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

大腸のなかでも、がんができやすい場所

人体では毎日約3000カ所でがんが発生しており、その多くが大腸で発生しています。しかし、身体に備わる強力な免疫機能ががんを攻撃し、消滅させることで健康は保たれています。その免疫機能の力が失われたとき、生き残ったがんが増殖を始めます。

がんができる場所は、便が貯留する直腸が33.35%、S状結腸が30.15%、その他が36.5%です。上行結腸、横行結腸、下行結腸にがんが増える傾向にありますが、大腸がんが最もできやすいのは直腸とS状結腸であることに変わりはありません。


昭和医科大学横浜市北部病院消化器センターでこれまで検査・診断した大腸がんの部位別発生数を図表1にまとめました。一般に「大腸がん」とひとくくりにされますが、直腸やS状結腸での発生数が多いことが分かります。陥凹かんおう型早期大腸がんも、直腸やS状結腸に多く見られることが分かっています。

newsweekjp20250827041022.jpg

『大腸がんで死んではいけない』(幻冬舎)より

転移のスピードが速い「陥凹型大腸がん」

大腸がんのほとんどは、粘膜にある吸収上皮細胞から発生する「腺がん」です。大腸内視鏡検査では、この粘膜を短時間に念入りに観察します。

陥凹型早期大腸がんは、発がん刺激を受けた正常粘膜からポリープを経由せずに発生します。小さくても転移のスピードが非常に速く、非常に危険ながんです。粘膜の表面から発生したがんは、大腸の壁に侵入して粘膜下層から筋層へと広がり、進行するにつれてリンパ節や肝臓、肺などのほかの臓器に早期に転移していきます。

陥凹型がんは圧倒的に直腸、S状結腸に発生するのです。大腸進行がんは直腸やS状結腸に発生しますが、これは陥凹型の発生部位とほぼ同じです。つまり、大腸がんの発生部位と陥凹型がんの発生部位はほぼ一致するのです。これは、陥凹型がんが進行大腸がんの前駆病変であることを証明しています。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

インタビュー:USスチールへの投資110億ドル、効

ビジネス

米GDP、第2四半期改定値3.3%増に上方修正 個

ワールド

英仏独、対イラン国連制裁復活へ手続き開始 核問題巡

ワールド

ウクライナ「安全保証」枠組み、来週にも策定へ=ゼレ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ」とは何か? 対策のカギは「航空機のトイレ」に
  • 2
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 5
    「ガソリンスタンドに行列」...ウクライナの反撃が「…
  • 6
    米ロ首脳会談の後、プーチンが「尻尾を振る相手」...…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「風力発電」能力が高い国はどこ…
  • 9
    【クイズ】1位はアメリカ...稼働中の「原子力発電所…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 8
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 9
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 10
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中