最新記事

ダイエット

運動するほど基礎代謝が落ちる!? 最新研究でわかった「本当にやせられるダイエット」とは......

2023年4月21日(金)17時10分
生田 哲(科学ジャーナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載
ヨガマットの上でサラダを手にする女性

ダイエットには運動とカロリー制限の組み合わせが重要だと言われるが…… ME Image - shutterstock


やせるには、どうすればいいのか。科学ジャーナリストの生田哲さんは「運動をすればやせられるとは限らない。アメリカ国立衛生研究所の調査によると、カロリー制限と運動を並行した人はうまくやせられなかった」という――。

※本稿は、生田哲『「健康神話」を科学的に検証する』(草思社)の一部を再編集したものです。

運動とカロリー制限を組み合わせればやせられるのか

普段、私たちが何気なくしている行動、たとえば、息をするにも、考えるにも、体を動かすにも、エネルギーを消費している。このエネルギーは、私たちが口にする食べ物を栄養素として体内に取り入れ、酸化することで得られる。この酸化プロセスのことを代謝という。

代謝が順調に進まない、あるいは、エネルギーとして消費されなかった栄養素が体内で脂肪として蓄積する。肥満は健康を脅かし、生活の質の低下を招く。そこで、肥満・代謝についての流行や常識を検証していこう。


【神話】
厳格なカロリー制限+激しい運動で効果的にやせられる

厳格なカロリー制限だけだと、やせるのに失敗することが多いことが知られている。失敗の原因のひとつは、筋肉が落ちて基礎代謝が低下したことにある。それなら、厳格なカロリー制限をしながら激しい運動をすれば、筋肉が維持されるので、体重を落とすことに成功するのではないか。


【科学的検証】
ウソである。

このダイエット方法は論理的に正しいようなので、成功するように思える。だが、実際にやってみると難しいことが、アメリカで証明済みである。肥満大国アメリカにふさわしいとしかいえないTV番組が、NBC放送のリアリティ番組「ビッゲスト・ルーザー(The Biggest Loser、最大の敗者)」だ。番組の内容は、肥満者が猛烈に努力することで、どれだけの体重を短期間に落とせるかを競うというもの(*1)。

この番組から得られた最大の教訓は、厳格なカロリー制限と激しい運動の組み合わせによって、体重が短期間に、しかも顕著に落ちることである。ここまでは予測通りである。問題はその後、この番組の参加者が、どうなったかである。

(*1)「The Biggest Loser(最大の敗者)」は2004年に始まり10年以上続いたNBC放送の人気番組である。

体重が急激に減少するダイエットはなぜ失敗するのか

数年後、いくつかのメディアが彼らを追跡し、こう報じた。彼らの体重が回復し、代謝が低下したこと、そして長期にわたる体重減少を目指した彼らの努力はムダだった、と。この番組の結果に注目したのはメディアばかりではない。結果は科学者の注意を引き、科学的に分析された結果は、一連の論文として発表された(*2)。

「The Biggest Loser」という番組は、競技者が厳格なカロリー制限と1日数時間に及ぶ激しい運動によって、どれだけ体重を落としたかを競うコンテストである。通常、勝利者は2~3カ月間で体重を40~50kgも落とすことに成功する。この急激な体重減少に興味を抱いたのが、NIH(アメリカ国立衛生研究所)の糖尿病・消化・腎臓病部門の責任者で、食事と運動によって代謝と脳がどのように変化するかを研究し、顕著な実績を挙げているケビン・ホール博士である。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 7

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中