最新記事

ヘルス

現役医師が断言「血液型と性格は関係ないし、自分の血液型を知る必要もない」

2023年1月7日(土)12時00分
名取 宏(内科医) *PRESIDENT Onlineからの転載

「自己成就予言」といって、生物学的に血液型と性格の関連がなくても、「O型は大雑把な性格だ」という情報に触れ続け、そう信じる人が多い社会においては、血液型と性格に関連が観察されるかもしれません。そうした現象が存在するという報告もあれば、観察できなかったとする報告もあります。存在するという報告でも、何千人、何万人を対象としてやっと差が出るかどうかの小さい関連で、人間関係に役立つほどの強い関連ではありません。

感染症と血液型には少しだけ関係がある

じつは血液型が、特定の感染症と関連しているという話もあります。医者である私にとって、血液型と感染症の関係は、血液型と性格との関係よりもずっと興味深いものです。

とくに胃腸管においての関連は以前より知られていて、たとえばO型の人はノロウイルスに感染しやすいという研究があります(※2)。ただ、その関連は強いものではなく、おおむね1.3倍程度です。O型でなくても感染するときはしますし、O型でも感染しないときはしません。

新型コロナウイルス感染症と血液型の関連も調べられています。A型は新型コロナの感染や重症化のリスクが高く、O型は保護的に働くとする研究が多いですが、関連は観察できないとする研究もあります(※3、4)。研究の結果が割れるのは、関連があったとしても、それほど強くないことを示しています。A型が新型コロナに感染しやすいとしても、2倍も3倍も感染しやすいということはありません。これくらいの小さな差は実地臨床には影響しません。A型だろうとO型だろうと重症化する可能性はあるのですから、同じように対応します。

※2 Infection, Genetics and Evolution. Volume 81, July 2020, 104245. "ABO blood group-associated susceptibility to norovirus infection: A systematic review and meta-analysis"
※3 Blood Reviews. Volume 48, July 2021, 100785. "The impact of ABO blood group on COVID-19 infection risk and mortality: A systematic review and meta-analysis"
※4 JAMA Netw Open. 2021;4(4):e217429. "Association of Sociodemographic Factors and Blood Group Type With Risk of COVID-19 in a US Population"

それぞれの血液型の「抗原」と「抗体」とは

では、どうして弱いながらも血液型と感染症に関連があるのでしょうか。いくつかの仮説を説明しますが、その前に血液について少し説明しましょう。

私たちの血液の約90%は水分で、ほかに赤血球、白血球、血小板といった血球成分、アルブミン、グロブリン、凝固因子といったタンパク質が含まれています。それぞれの血液型の赤血球を調べると、A型には「A抗原」、B型には「B抗原」、AB型には「AとBの両方の抗原」があり、O型にはどちらの抗原もありません。一方、血液を凝固させて血小板や凝固因子を除いた血清を調べると、A型にはB抗原に反応する「抗B」、B型にはA抗原に反応する「抗A」、O型には「抗Aと抗Bの両方」の抗体があり、AB型にはどちらの抗体もありません。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中