最新記事
医療

目は確実に老化する。白内障、緑内障、そして日本で近年増加中の「失明原因」とは?

2022年2月5日(土)16時05分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
高齢者の目

xijian-iStock.

<60歳以上の高齢者の失明原因第1位。加齢黄斑変性(AMD)とはどのような疾患なのか。その治療法、予防法は>

加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)。文字どおり加齢などによって目の黄斑部(網膜の中心部分)に異常が生じる病気だ。

30年前は日本ではほとんど認識されていなかったが、欧米では失明の主要原因になっており、早くからその治療が重要視されてきた。

現在は日本でも視覚障害の原因の第4位を占め、60歳以上の高齢者の失明原因では第1位となっているという。

発症要因は加齢のほか、食生活の欧米化や喫煙、太陽やパソコンの光線に目がさらされる機会の増加など(酸化ストレス)。高齢化に伴い、今後患者数が激増することが懸念されている。

加齢黄斑変性(AMD)に代表される「網膜硝子体」の治療と予防の第一人者である聖隷浜松病院(静岡県)の眼科部長・尾花明氏は、光環境や食習慣が大きく変化している中で進行する高齢化時代に、生涯、視機能を保つためには意識的に眼の健康を気遣う必要があると言う。

中高年や加齢黄斑変性患者に向けて、加齢黄斑変性とはどのような疾患なのか、その最新治療や予防法について、自身の臨床経験や臨床研究成果を基に執筆したという尾花氏の新刊『「一生よく見える目」をつくる! 加齢黄斑変性 治療と予防 最新マニュアル』(CCCメディアハウス)より、3回にわたって抜粋する。

この記事は第1回。

◇ ◇ ◇

50歳のいま見ている世界と、20歳の頃に見ていた世界は違う!?

人はみな「歳はとりたくない」と願うものです。しかし、時間は平等に過ぎて、「老化」は確実にやってきます。

「老化」はカラダの機能を徐々に奪い、ついこの前までできていたことがだんだんできなくなります。また、五感が鈍り、好奇心を失うことで旅先の絶景を見ても感動が薄れてしまったり、新しい情報も処理できなくなって、最近耳にしたことはすぐに忘れてしまったりします。

「人生百年時代」と言われる昨今、この「老化」と上手に向き合うことは、現代人にとって必要不可欠な心構えと言えるでしょう。

いままさにその時を迎えようとしている人はもちろん、「まだ自分には関係ない」と考えている中年真っ盛りの人にとっても、「長い老後」を楽しく過ごすために正しい知識を身につけ、「老い」に向けて準備しておくことが大切です。

昭和33年生まれ、齢63を迎えた筆者も「老化」を実感する場面が増えてきました。

眼科医として見え方のトラブルを抱えた患者を何万人も診てきましたが、自分自身、遠近両用メガネがないと魚の小骨が見えず、プラスチックフィルムの継ぎ目がわからずイライラし、会議の配布資料を読むのもうんざりするようになり、患者さんがよく口にされる愚痴どおり、目から老化を実感するようになりました。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

テスラ株「途方もなく過大評価」と投資家バリー氏、ブ

ワールド

ホンジュラス大統領選、「台湾と復交」支持の野党2候

ビジネス

インド経常赤字、7─9月GDP比1.3%に低下 輸

ビジネス

イーライリリー、米で肥満症薬「ゼップバウンド」の価
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 2
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    600人超死亡、400万人超が被災...東南アジアの豪雨の…
  • 9
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 10
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中