最新記事

アルコール

「オレンジワイン」、8000年の時を経て密かなブームに

Orange Wine Is Taking Over

2019年2月25日(月)18時20分
イブ・ワトリング

ジョージアには今でもクベブリを使っている醸造家が多くいる。カハ・チョティアシュビリは東部カヘティ地方で代々ワインを醸造してきた一族の跡取り。琥珀色のワインの伝統を守ろうと、共同経営のブドウ畑で最高50種の特産品種を育てている。

ブドウを破砕した後、皮だけでなく梗こうと呼ばれるブドウの柄の部分も一緒に漬け込む醸造家もいるが、チョティアシュビリは梗を除いて発酵させる。

そのまま6、7カ月寝かせて、オーク材の樽かステンレスのタンクに入れ替えて熟成させる。クベブリから直接ボトル詰めする場合もある。

ブドウ栽培でも醸造過程でも添加物や化学物質は一切使わない。人の手をほとんど加えないからなおさら、経験の浅い醸造家は微妙な調整に失敗しがちだが、ブドウ栽培とワイン造りに幼い頃から親しんできたチョティアシュビリならお手の物だ。

もっともオレンジワインはジョージアの専売特許ではない。イタリアやスロベニアでも白ブドウをスキンコンタクトで発酵させる伝統があり、いま人気のあるオレンジワインの素晴らしい銘柄が数多く生まれている。

経験が最高の教師になる

ワインに詳しいスロベニア人ライター、サショ・ドラビネッチは、ヨーロッパでオレンジワインが見直され、人気に火が付いて大喜びしている。スロベニア南西部の港湾都市コペルで育った彼は子供の頃、地元の農家がスキンコンタクトワインを造るのを見てきた。

地元では70年代までスキンコンタクトワインがよく飲まれていたが、その後白ワインの人気に押されて下火に......。伝統製法が復活したのは1年ほど前で、昔のものに比べてより安定した品質が可能になった。ドラビネッチは仲間と共にオレンジワインの試飲会を主催。それが発展してスロベニアで2012年にオレンジワイン祭りが開催され、同年秋にウィーンでも姉妹祭が開かれて、いずれも大盛況だった。

ブームに乗ってスペインや南アフリカ、さらにはカリフォルニアの醸造家もオレンジワイン造りに取り組み始めた。

発酵に天然酵母を使い、酸化防止剤の亜硫酸塩の使用も極力抑える自然派ワインは90年代にフランスで生まれ、人気を呼んでいるが、オレンジワインもその仲間だ。「小規模の手作り製法で、醸造家によって特徴的な味わいがあり、醸造家と愛好家の交流が盛んだ」と、ドラビネッチは言う。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ノルウェーSWF、ガザ関連でさらに6社投資除外

ワールド

ゼレンスキー氏、ロシアの「冷酷な」攻撃非難 「訪米

ワールド

イラン、協力停止後もIAEAと協議継続 「数日中に

ワールド

米特使、イスラエルはレバノン和平計画に従うべき
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に入る国はどこ?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する…
  • 5
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 6
    恐怖体験...飛行機内で隣の客から「ハラスメント」を…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    40代は資格より自分のスキルを「リストラ」せよ――年…
  • 9
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 10
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 7
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 8
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 9
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 10
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中