「セックスと恋愛を素直に見つめた」...米ロック界を席巻する性的マイノリティ歌手のラブソング

‘It’s Just Straight–Up How I Felt’

2025年4月25日(金)17時25分
デービッド・チウ(音楽ライター)

限りある人生だから

同様に、荘厳さが漂う「ベスト・ゲス」では恋に落ちる興奮を、いくらか冷めた感覚を交えて探っている。

「『ついに見つけた。これは永遠に続く』と簡単に思ってしまう。実際にはそうではないけれど、だからと言って諦めていいわけではない。『あなたは最もあり得そうな未来』という歌詞は、時を止めようとするのは無謀な試みだから互いに何も保証できないけど、あなたが望む限り愛し続けようとするつもりだ、ということ。自分は変わると認めるほうが長生きできると思う。変化が起きたときに、不意を突かれずに済むから」

ルーシー・ダッカス「ベスト・ゲス」


どの曲も感傷的なわけではない。優雅な「リメレンス」や緊張感のある「トーク」、心が痛む「カムアウト」、幻想的で独特の雰囲気の「フォーエバー・イズ・ア・フィーリング」は複雑な恋愛関係をメランコリックに、あるいは切望を込めて捉えている。

ルーシー・ダッカス「リメレンス」

ルーシー・ダッカス「トーク」

ルーシー・ダッカス「カムアウト」

ルーシー・ダッカス「フォーエバー・イズ・ア・フィーリング」(アルバムタイトル曲)

「永遠は目に見えない」と、ダッカスはタイトル曲について語る。「でもそれは今ここで起きていて、時には触れることができる。始まりも終わりも把握できない形で時間は続くと、私たちは知っている。自分が感じることはいずれ消えると分かっていても」

「愛はそういうものだと思う。人は愛に触れると、善なるものの生命力のような現在進行形のプロセスの一部になる。自分の時間が尽きる前に、ささやかな愛を注ぎ込む。愛は私なしでも続くと思いたい。『愛した』ということは意味を持つ。善から生まれて、さらなる愛を呼び起こす」

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