「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Diaries』論争に欠けている「本当の問題」
DOCUMENTARY FILMMAKERS ARE RUTHLESS

だからこそ僕たちドキュメンタリストは、自分のエゴ(主観や思い)を優先する自分たちの行いを鬼畜の所業だ、などと自嘲する。胸など張れない。張れるわけがない。その自覚と覚悟がないままにドキュメンタリーを作れば、大きな摩擦が起きて当然だ。
ドキュメンタリー映画『Black Box Diaries』の最大の問題点はここにある。自らをジャーナリストと称し、映像や音声の無断使用を「公益性」のためと主張する伊藤詩織監督だけではなく、作品を擁護する人たちも批判する人たちも、ドキュメンタリーとジャーナリズムを混同している。
ジャーナリズムは作品ではない。その問題提起と社会への周知に大きな意味がある。でもドキュメンタリーは作品だ。
公正中立なピカソの絵をあなたは見たいと思うだろうか。公益性の実現を目的としたベートーベンの交響曲を聴きたいと思うだろうか。客観的な開高健のノンフィクションを読みたいと思うだろうか。
もちろん作品がそうした価値を持つことはある。でもそれは後付けだ。公益性や公正中立など、ドキュメンタリストは指標にすべきではない。
ちなみに本作において争点の1つとなっている捜査員の電話の音声の使用だが、公務中の公務員のものというレトリックで正当化できなくはない。
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