最新記事
軍艦島

ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の超過密空間のリアル「島の社交場」として重宝された場所は?

2025年1月15日(水)16時43分
風来堂 (編集プロダクション)*PRESIDENT Onlineからの転載
ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の超過密空間のリアル「島の社交場」として重宝された場所は?

A_kiri – shutterstock –

<リアルな端島の暮らしぶりを紹介しよう。新卒の月給は5〜6万円だった時代に、軍艦島では月約20万円と平均の4倍、家賃タダ、電気代は10円だった>

ドラマ「海に眠るダイヤモンド」(TBS系)の舞台として再注目されている長崎県の軍艦島(端島)。

編集プロダクション・風来堂は「昭和の軍艦島での炭鉱夫とその家族の暮らしについて調べたところ、三菱鉱業が住居を提供し家賃は無料だったが、トイレ・風呂は共同で、それゆえの苦労もあったことがわかった」という──。

※本稿は、風来堂『カラーでよみがえる軍艦島』(イースト新書Q)の一部を再編集したものです。


日本初の鉄筋コンクリート高層住宅は軍艦島の30号棟

明治期から大正期にかけての日本の民間住居は一般的に木造住宅が多く、軍艦島でも木造の炭鉱長屋住宅が立ち並んでいた。

1916(大正5)年からは、過密な人口対策と住宅戸数を増やすため、日本初の高層鉄筋コンクリート(RC)造アパートに建て替えを行った。国内最古のコンクリート(RC)造アパートとなった軍艦島の30号棟は、当初は4階建てだったが増築されて地上7階建ての大きなアパートになった。

この小さな島に高層のアパートが建設されたことから、どれだけ人口が多かったかが想像できる。

なお、この30号棟の設計者が、イギリス商人であるトーマス・グラバーが住んだ「グラバー邸」の主人と交流があったことから、通称「グラバーハウス」と呼ばれていた。

三菱鉱業(現・三菱マテリアル)の炭鉱として栄えた島の住居は、基本的に社宅または寮であった。そのため、鉱員である三菱の職員や鉱員と家族、そして下請けで働いていた者は家賃が無料だったため、その心配をする必要がなかった。

とはいえ、住居のレベルには仕事上の立場により明確な格差があった。

鉱員なら家賃はタダだが、住居は地位による格差あり

1949(昭和24)年にはすでに建設されていた幹部が住む鉱長社宅(5号棟)は、島内で最も恵まれた稜線上にあり、眺望も抜群で島では唯一の本造2階建て、内風呂がある高級住宅だった。

職員社宅(2、3、8、14、25、56、57号棟)も見晴らしの良い高台に建てられていた。部屋の広さは2Kないし3Kのものが多く、1959(昭和34)年以降に建設された幹部職員住宅には内風呂があった。

その反面、鉱員社宅(16〜20、30、65号棟)は共同浴場と共同トイレであった。通称「日給社宅」と呼ばれた16〜20号棟は北西側の低地に建てられ、防潮壁の役割を担っていたため窓は小さく風通しも良くなかった。

海に囲まれた軍艦島の30号棟下層階では、常に湿気や悪臭に悩まされていたという。また、海が荒れると最も激しい風雨や波が打ち付ける場所に建てられていたため、階段を伝って雨水が階下へ降り注いだ。

台風の後には1階が水没して家財道具などが浮いていたということもあった。

ガジェット
仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、モバイルバッテリーがビジネスパーソンに最適な理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中