最新記事
軍艦島

TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3個分の軍艦島での「荒くれた心身を癒す」スナックに遊郭も

2024年12月24日(火)09時40分
風来堂(編集プロダクション)*PRESIDENT Onlineからの転載
TBS日曜劇場が描かなかった「東京ドーム1.3個分の軍艦島での生活」荒くれた心身を癒すスナックに遊郭も...

Spyan -shutterstock-

<軍艦島(端島)は大都会だった。給料が高くても使い道がなく「高いものから売れた」。ビリヤード場、碁会所、麻雀店にパチンコ店...>

世界文化遺産にも指定されている長崎県の軍艦島(端島)。

炭鉱の島として賑わった時代を調べた編集プロダクション・風来堂は「ドラマ『海に眠るダイヤモンド』(TBS)の舞台である1955年ごろは最盛期。せまい島内には商店街や青空市、食堂やスナックもあり、57年までは遊郭もあった」という──。

※本稿は、風来堂『カラーでよみがえる軍艦島』(イースト新書Q)の一部を再編集したものです。


東京ドーム1.3個分の島内で都市機能は完成していた

軍艦島はほぼ完成した都市機能を持っていた。飲食店や商店も充実し、島内には三菱鉱業直営の購買部と常設の個人商店があった。

島の北西部の57号棟にある商店街は「端島銀座」と呼ばれ、酒、雑貨、衣類、飲食、料理屋、タバコ雑貨、八百屋、青果や魚屋が軒を連ねていた。

地代は三菱に対して坪5円。日給社宅16号棟の1階にも店舗が入居し、質屋でありながら学生服も販売する「亀屋」や、文具や雑貨を販売していた「中島書店」、「上田商店」と、三菱の管理部の出張所である外勤詰所があった。

「飯田電機」や日用品も販売する「鐘ケ江酒店」、「大石洋装店」もあった。30号棟には賃金支払窓口の他に、「永田こまもの店」「山口漬物店」「今村下駄店」「ニコニコ食堂」「落水時計店」などの店舗が入居していた。

米は65号棟の地下に専用倉庫があり、販売も行われていた。65号棟東側の地下には製氷室があり、夏季限定でアイスキャンディーが売られていたという。

端島(はしま)購買会は59号棟と60号棟の地下にあり、生活雑貨などが島内最大のマーケットで、市価よりも安く販売されていた。購買では券を購入し、券を商品と交換するシステムだった。

父親からお使いを頼まれた子どもが酒を買う場合は、一升瓶を持参してその中に量った酒を入れてもらっていた。酒は2合か3合ほどが昭和初期で19銭だった。

購買会の他に買い物をする場として生協の専用販売所もあり、そこには牛乳屋なども設置されていた。

青空市で魚や野菜が売られ賑わったが、海が荒れると...

島の目抜き通りでは連日青空市が開かれ、対岸の高浜村にある野々串港から来た行商が軒を連ねていた。

魚や野菜が売られ、魚屋は10時半ごろに上陸して11時〜16時まで店を開き、八百屋は9時〜11時頃まで売って帰った。売れ残りは購買会に委託売りにしていたようだ。生花もよく売れていたという。緑がない端島にとって、生花は島民の癒やしだったのかもしれない。

鉱員の給料日になると、普段は見かけない行商も島を訪れていた。というのも、島民は平均よりも高い給料をもらっていたが使い道がほとんどなかったのだ。

そのため、「軍艦島では高いものから売れる」と言われていた。島民は行商にとって「いいお客」だった。女性客は安い化粧品ではなく、高級品を購入した。また、靴も衣類もオーダーメイドしたものを購入していたのだ。

しかし、毎日2回長崎からの野母商船「平戸口丸」や「夕顔丸」によって運ばれてきた新鮮な肉や野菜も、時化(しけ)が続くと手に入れられなくなってしまう。そんな時は缶詰やラーメンを食べる生活を余儀なくされていたという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国軍、台湾周辺で実弾射撃訓練開始 演習2日目

ワールド

キーウ郊外で停電続く、ロシア空爆後 住民は避難所で

ワールド

香港、民間住宅用地供給が増加見通し 市場の回復基調

ワールド

ゼレンスキー氏「プーチン氏を信頼せず」、勝利に米の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 7
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中