神田伯山が語る25年大河ドラマ主人公・蔦屋重三郎「愛と金で文化・芸能を育てた男」
人生、賭けに出なければならない時がある
考えてもみれば、僕が講談師になったというのは、大きな博打であり挑戦でした。僕が入門した十数年前は、今よりもずっと講談が知られていませんでした。うちの師匠の神田松鯉(しょうり)をはじめ、多くの人が頑張って講談を支えていらしたのですが、冷静に考えれば、当時、講談の世界に飛び込むということは、それを永久就職先にするわけです。なかなかの大博打だなと今更ながら思います。
蔦重も23歳で自分の店を持って、出版に賭けたわけですよね。そうやって、勝負に出ないといけないときが確かにあるのだろうと思います。
また、新しい文化・芸能に投資し、さまざまな出版物を刊行していますが、その分、失敗することも多かったでしょう。逆に商品がヒットして、あまり目立ちすぎると、お上からは処罰を受けたりもする。それでも逃げずにずっとやり続けるというところにも魅力を感じますね。
反骨の講釈師・馬場文耕と蔦重
その反骨精神は、蔦重よりも少し前の時代に活躍した講釈師・馬場文耕にも通じるところがあるかなと思います。当時、講釈師というのはジャーナリスティックなイメージもある存在でした。
もともと講釈は侍・浪人の芸で、気骨があり、ドキュメンタリーやノンフィクションのようなものだったのです。馬場文耕は、1754(宝暦4)年頃に起きた、郡上(ぐじょう)藩藩主・金森頼錦(よりかね)が強行した財政再建策に農民が反発した金森騒動を題材にし、高座にかけました。
その後、それをもとに『平かな森の雫』という著作にまとめ、幕政批判をしたことで、打首獄門の刑に処されています。
長い講談の歴史でも、死罪となったのは馬場文耕だけです。宝暦8年に小塚原刑場で獄門に処され、41歳で亡くなります。当時、寛延3年生まれの蔦重は9歳くらいで、物心がつくかつかないかの頃。直接的な関係はないけれども、時代の雰囲気は共有していたのかもしれません。
蔦重にも馬場文耕のような反骨精神を感じるところがあります。文耕は命を落としてまでもやるという侍の気骨がありますが、町人出の蔦重は距離を取りながら、笑いを交えて、ぎりぎりの線で、体制を風刺していく。お上を洒落のめす。そうした反骨精神も、蔦重の魅力的な部分ですね。
神田伯山(かんだ・はくざん)
1983年東京都生まれ。講談師。日本講談協会、落語芸術協会所属。2007年に三代目神田松鯉に入門。2012年に二ツ目昇進。2020年に真打昇進とともに、六代目神田伯山を襲名。主な著書に『講談放浪記』(講談社)、『神田松之丞 講談入門』(河出書房新社)などがある。
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