最新記事
ハリウッド

「ハリウッドに未来はあるか?」映画館の収益が落ち、AIの台頭や多様性に頭を悩ませる...映画の聖地の将来予測

What’s Ahead for Hollywood?

2024年7月12日(金)17時27分
ソフィー・ロイド(ポップカルチャー&エンタメ担当)

newsweekjp_20240712023227.jpg

昨年の俳優組合のストはAI利用や配信ビジネスをめぐって118日間続いた MICHAEL TULLBERG/GETTY IMAGES

真っ先にAIが進出しそうなのが脚本の分野だ。フォートによれば、観客・視聴者の好みに合わせた脚本を量産するにはチャットGPTのような技術が役に立つ。

撮影や照明などの現場でもAIが人間のライバルになり得る。ただしAIが撮影スタッフを駆逐するのか、補助的な役割にとどまるのかは不透明で、まだ議論の余地がある。


フォートのみるところ、アニメや視覚効果の現場でもAIの出番が増えるのは確実だ。従来のような手仕事は減るだろうが、AIを駆使して質の高いイメージを生み出せる人材への需要は増す。

見通しが暗いのは俳優だ。「ディープフェイク」と呼ばれる映像合成技術を使えば、演技の「自動化」は簡単だとフォートは言う。実際、昨年の脚本家組合と俳優組合のストでもAIへの対応は大きな争点になった。

だが、いくらディープフェイクの技術が進化しても、熟達の俳優を駆逐するのは不可能に近いだろう。「感情のこもった繊細な演技には役者の才能が不可欠。その点に変わりはない」と、フォートは言う。「結果としてAIに食われてしまう仕事もあるだろうが、AIのおかげで生まれる新たな仕事もあるはずだ」

他の映画とAIで作られたという007映画予告編のコンセプト映像 KH Studio

作品の多様化はもっと進むか

動画配信サービスのトゥビと市場調査会社ハリスが合同で実施した調査によれば、ミレニアル世代(28~43歳)とZ世代(12~27歳)では「作品の内容や登場人物にもっと多様性が欲しい」という回答が全体の4分の3に達した。独立プロの活動や、低予算でも意欲的な映画・ドラマに期待したいという回答も7割を超えていた。

「大手スタジオや大企業の資金に頼ってはいられないと考えるクリエーターが増えている」と語るのは「スターフューリー」の黒人女性ヌビア・デュバル・ウィルソン。「人種や性的指向のため業界の主流から排除されてきた人たちが自力で作品を製作し、配給も手がける。そんなケースが今後はもっと増えると思う」

動画配信サービスの独り勝ちは今後も続くか

種類の豊富さや利便性の高さから、動画配信サービスは今後も優位を維持すると思われる。だが前出のフォートによれば、伝統的メディアへの回帰現象にも留意すべきだ。現に音楽の世界では、アナログレコードの人気が復活している。

同様に映像の世界でも「DVDやブルーレイなどが再び注目を集め、新旧の技術を融合させた新たな視聴体験が生まれる可能性がある」という。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、サンフランシスコへの州兵派遣計画を中止

ワールド

トランプ氏、習主席と30日に韓国で会談=ホワイトハ

ワールド

ガザ地表の不発弾除去、20─30年かかる見通し=援

ビジネス

米ブラックストーン、7─9月期は増益 企業取引が活
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 2
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 3
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺している動物は?
  • 4
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 5
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 6
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 7
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 8
    「石炭の時代は終わった」南アジア4カ国で進む、知ら…
  • 9
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 10
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 10
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中