最新記事
小説

小説家トム・ハンクスが描く、「ちょっと美しすぎる」映画の世界

Tom Hanks, Novelist!

2023年5月27日(土)11時25分
ダン・コイス(スレート誌エディター)
トム・ハンクス

ハリウッドのど真ん中で数十年間「いい人」であり続けるハンクスは、ハリウッドの舞台裏を語るにはいい人すぎるのかもしれない KARWAI TANGーWIREIMAGE/GETTY IMAGES

<舞台は超大作スーパーヒーロー映画の制作現場。ショービジネスの優等生がショービジネスを描いたら...>

「二流のジャーナリストはすぐに、映画がどのように作られるかを説明しようとする」

トム・ハンクスの新作小説で、映画監督のビル・ジョンソンはそう苦言を呈する。彼らは映画が、「月に行って帰ってくる飛行計画のように、箇条書きされた」段階的な手順を踏むと思っているのだ。

映画制作がどのようなものか、ハンクスはよく知っている。月への旅と帰還についても少々知っている。

そんな彼にとって初めての長編となる新作小説『メイキング・オブ・アナザー・メジャー・モーション・ピクチャー・マスターピース』は、映画作りを体系的で予測可能なプロセスとしてではなく、幸せな偶然と不幸な偶然の混沌とした連続として描く。

そのカオスの舵を取るのは、アポロ13号を地球に帰還させた人々のような厳格で素朴なプロフェッショナルたちだ。

今から10年前、ハンクスは友人4人で月を目指す物語のアイデアを思い付いた。既に映画の脚本を執筆したことはあった。

初めて執筆した小説「アラン・ビーン、ほか四名」はニューヨーカー誌に掲載され、2017年には短編集『変わったタイプ』(邦訳・新潮社)が刊行された。これがベストセラーになり、編集者からハリウッドに関する小説を書かないかと提案された。

当初は抵抗を感じていたが、最近のインタビューで、映画制作は「見かけほど簡単ではない」ことを伝えたくなったと語っている。「とても困難で、(携わる)人々は打ちのめされる」

職人たちが魔法を起こす

ハンクスには物書きの才能がある。ただし、鋭い風刺や、奥深くて複雑な登場人物ということではない。魅力的な会話やさりげない造語、ショービジネス(小説の登場人物たちは「ショーというビジネス」と呼ぶ)にまつわる辛辣でインスピレーションに満ちた語りが、彼の持ち味だ。

ショービジネスは、欲望にまみれて注目を浴びたがるドラマ中毒者ではなく、純粋で輝かしい才能を持つ無名の人々のたゆまない努力によってつくられる。それがハンクスの信念かもしれない。

新作小説は架空の超大作映画『ナイトシェード:ファイヤーフォールの旋盤』の舞台裏を描く。映画制作に必要なのは、時間を守ること、悪ふざけをしすぎないこと、セリフを覚え、自分の仕事をして、全力を尽くすこと。

日本企業
変わる「JBIC」...2つの「欧州ファンド」で、日本のスタートアップ支援に乗り出した理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRBは当面政策維持を、生産性頼みは尚早=カンザス

ワールド

米雇用統計「素晴らしい」、米は借入コスト減らすべき

ワールド

米が制限順守ならロシアも同調、新START失効でラ

ビジネス

1月米雇用、13万人増と1年超ぶり大幅増 失業率4
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    一体なぜ? 中国でハリー・ポッターの「あの悪役」が…
  • 6
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 7
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 8
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 9
    まさに「灯台下暗し」...九州大学の研究チームが「大…
  • 10
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中