最新記事

世界に挑戦する日本人20

世界は「届かないとは思わない」YOSHIKIが語る日本エンタメ界の現在地と、LAで挑戦を続ける訳

2022年9月2日(金)13時15分
YOSHIKI(アーティスト)

220906p20XJP_01.jpg

ビジュアル系ロックバンドとして日本で絶大な支持を得ていたXのメンバー。左からTAIJI、PATA、YOSHIKI、Toshl、HIDE X JAPAN

あの頃、ロックバンドがテレビに出るなんて違うとか、ロックでCDを100万枚なんて売れるわけがないとか言われていて。僕のやっていることは間違っていると言う人たちに対して、そういう前提は全部壊しちゃえと思う気持ちでやっていた。

そんななかで、思ったより早くというか、本当に一瞬で(91年の初の)東京ドームにまで行ってしまった。協力してくれる素晴らしい人たちにも恵まれたし、もちろん簡単なことではないのだが、思ったよりは大変じゃなかった。本当に楽しんでいると、仕事とそれ以外の境目というのはあまりない。なので、働いているという感覚もあまりないし、楽しくて、そのまま一瞬でミリオンセラーと東京ドームまで行ってしまった。じゃあ海外も、その勢いで行っちゃえ!と......。

あとは、僕以上に(亡くなった)TAIJIとHIDEが完全に洋楽志向で、海外で通用するロックバンドになりたいという気持ちがとても強かった。TAIJIはアメリカンなハードロックがすごく好きで。HIDEはブリティッシュとかも好きだった。

僕自身は、本当はロンドンに行きたかった。歴史的背景も含めて、ヨーロッパがとても好き。4歳からピアノを始めて、もともとはクラシックが好きだったので、行くなら漠然とヨーロッパというのがあった。でも、音楽で勝負するんだったらやはり(エンターテインメントに強い)ロサンゼルスだ、ということでアメリカに渡った」

そして92年8月、ニューヨークのロックフェラーセンターで記者会見を行い、レッド・ツェッペリンなど世界的アーティストを輩出してきたアトランティック・レコーズと契約し、世界進出することを宣言。そこで、現地の記者から「英語が母国語ではないバンドがアメリカで成功した例はない」と言われ、厳しい洗礼を受ける。

「その質問もすごかったけれど、それに対して僕がしゃべっていた英語の発音の悪さ! ああ、このレベルだったんだって(編集部注:この会見は16年制作のドキュメンタリー映画『WE ARE X』に収録されている)。

日本で駆け上がった勢いでアメリカに......と思って行ってみたら、考えていたのと全然違っていた。当時の僕は英語をしゃべれなかったし、やはりアメリカにいると、日本で培ってきたプライドとか、そういうものはズタズタにされるわけですよ。

先ほど、日本では思ったより順調に行ってしまったって話したけれど、やはりその間には全国のライブハウスを回ったり、ものすごく細かいプロモーションをしたりとか、たくさんのことを経験していた。そうやって日本でもある程度のところまで行ったので、ああ、これを今度は世界規模でもう一回やるの?と。

そう思ったとき、わくわく感と同時に100%やれるかどうかは自分でも分からなかった。日本にいればある意味、地位もある。それを全部脱ぎ捨て、裸になって、もう一度向かっていけるのだろうかと。

でも、できない要素はないとも思った。英語は、やれば必ず成果は上がる。だったらしゃべれるようになればいいやと思って、2年くらい勉強して、まずは話せるようになった。要するに、自分にとってマイナスだと思う要素を全部消去していった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

仏首相、年金改革を27年まで停止 不信任案回避へ左

ビジネス

米ウェルズ・ファーゴ、中期目標引き上げ 7─9月期

ビジネス

FRB、年内あと2回の利下げの見通し=ボウマン副議

ビジネス

JPモルガン、四半期利益が予想上回る 金利収入見通
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 5
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 6
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 7
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 10
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 10
    あなたは何型に当てはまる?「5つの睡眠タイプ」で記…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中