最新記事

日本社会

香川照之、降板ラッシュよりも痛い最大の痛恨 「ヒール」は演技ではなく本当の姿?

2022年9月10日(土)11時00分
木村隆志(コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者) *東洋経済オンラインからの転載

悪役は演技ではなく本当の姿なのか

香川さんの謝罪を報じたニュースのコメント欄には、「謝罪というよりドラマの1シーンみたい」「この反省した演技力見習いたいですね」などの感想をあげる声が目立ちました。奇しくもその約8時間前、香川さんは出演ドラマ「六本木クラス」(テレビ朝日系)で迫真の謝罪シーンを行ったばかり。しかも「反省した姿を演じて人々をあざむいている」というシーンだっただけに、その姿を重ねて皮肉交じりの言葉を浴びせたくなるのも仕方がないでしょう。

しかし、その「謝罪は芝居では?」と思わせてしまったことこそが今回の騒動における最大の過ちかもしれません。これまで香川さんは「日本を代表する名優の1人」と言われてきましたが、今回の一件で「悪役の演技がうまいのではなく、本当に悪い人だった」とみなされかねないのです。つまり、「香川さんにとって拠りどころのはずである演技にケチがついてしまった」ということ。俳優は人から見られることで成立する職業であり、その上手下手には明確な基準がない以上、このイメージは痛恨でしょう。

事実ネット上には次のようなコメントがありました。「結局香川という男は、ドラマとか映画でありのままの自分の姿を脚本の中の役として演じていたわけで、なるほどそれはそれで臨場感もあるし迫力もあるし、彼にとっては至極簡単だよね」。

香川さんは降板発表の翌2日朝も「THE TIME,」にVTR出演し、約4分間にわたる謝罪を行いましたが、内容は1週間前からさほど変わっていませんでした。むしろ「私のこれまでの人生」「俳優というのは......」などの自分語りや、「愛する『THE TIME,』」「私も楽しみに朝早起きしてこの番組に臨んでおりました」などの未練をのぞかせる姿は、いい人を演じている悪役に見えた感すらあります。

香川さんほどの俳優であれば、年内の作品はもちろん、1~3年先までスケジュールが埋まっていることも十分考えられますが、それらは白紙に戻されてしまうでしょう。その理由は卑劣な行為だけでなく、「俳優・香川照之を見る視聴者の目が変わってしまった」ことが大きいのです。

セクハラよりも危うい選民意識

また、香川さんがメディアと世間の人々を「甘く見ていた」ところも見え隠れしています。2010年代後半以降、芸能界は不倫報道が相次ぎ、多くの芸能人がメディアとSNSによって叩かれ、活躍の場を失っていきました。そんなスキャンダルリスクの高い状況下の中、このような行為を行ってしまったのは、「不倫ではないから」「夜のお店だから」などと思っていたからだけでなく、メディアと人々の影響力を甘く見ていたからではないでしょうか。

「甘く見ていた」は、そのほかにも、「報道・情報番組のキャスターを受けたこと」「世界的企業のトヨタ自動車などのCMに出演したこと」「歌舞伎界に多大なる迷惑をかけること」などもそうでしょう。いずれも責任の大きさと、降板リスクの高さを甘く見ていた感があります。

2日の「THE TIME,」は代理MCを安住紳一郎アナが務め、翌週からは江藤愛アナを中心に3人のアナウンサーが担うことが発表されました。香川さんがネット上で「働きすぎ」と心配される安住アナと江藤アナをはじめ、番組関係者に負担をかけていることは間違いないでしょう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国首相、フォーラムで一段の経済開放約束 日本企業

ワールド

G7、エネ供給支援へ必要な措置講じる用意 外相声明

ワールド

トランプ氏、米空港にICE捜査官派遣と警告 予算巡

ワールド

トランプ氏、イランに48時間以内のホルムズ開放求め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 3
    メーガン妃、親友称賛の投稿が波紋...チャリティーの場でにじんだ「私的発信」
  • 4
    BTSカムバック公演で光化門に26万人、ソウル中心部の…
  • 5
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 6
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    「日本人のほうが民度が低い」を招いてしまった渋谷…
  • 9
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記…
  • 10
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 4
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 9
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 10
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中