アクの強さと芸術性...鬼才ウェス・アンダーソンが魅せる『フレンチ・ディスパッチ』
Wes Anderson’s Licorice
冒頭部分と呼応するラストシーンで、ハウィッツァーの死を悼む編集部の面々が彼のオフィス(編集長の遺体はデスクに横たわったまま)に集まり、変わり者だった編集長の追悼記事を書く。これも撮影現場で現実に起きていることの反映だ。監督と長年一緒に映画を作ってきたチームが集結し、彼の風変わりなビジョンを形にする。
編集をめぐるハウィッツアーの最も心に残るアドバイス、「きちんと意図が伝わるように書け」はアート制作の極意と言えるだろう。考え抜かれ、粘り強く、陽気に製作された本作は、とりとめのない構成も妙に冷めているところも、芸術的判断ミスではなく意図的なものに感じられる。個人的な好みはさておき、偶然の産物は一つもない。
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THE FRENCH DISPATCH OF THE LIBERTY, KANSAS EVENING SUN
『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』
監督╱ウェス・アンダーソン
主演╱ビル・マーレー、オーウェン・ウィルソン
日本公開は1月28日