最新記事

ドラマ

ドラマで「悪役」を演じるということ...役との向き合い方、現実への影響

The Season Is All About Freedom.

2021年6月25日(金)11時53分
H・アラン・スコット
俳優のジョセフ・ファインズ

ファインズが演じる権力者フレッドは新シーズンでは反省を迫られる LARRY BUSACCA/GETTY IMAGES

<暗黒の近未来を描く『ハンドメイズ・テイル』で、ディストピアの権力者を演じるジョセフ・ファインズに迷いはない>

Huluの連続ドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』の第4シーズン、そのキーワードは「自由」だ──と言ったのは、イギリス人俳優のジョセフ・ファインズ。マーガレット・アトウッドの同名小説(1985年)を下敷きとする本作で、近未来のディストピア世界ギレアドに君臨し、人々の自由を奪う司令官フレッドを演じている。

「今シーズンは舞台が地理的に広がり、ギレアドの外の世界まで見える。それが自由のパラドックスを生み出す」

フレッドと主人公ジューン(エリザベス・モス)の力関係は、フレッドの邪悪さを浮き彫りにする。「彼は自分のやっていることを理解している。自分自身にも周囲の人間にも、自分こそ犠牲者だと信じ込ませているが、実は加害者であるような人間。それがフレッドだ」

だが、今シーズンは立場が逆転する。「彼は自分のことをじっくり反省しなくてはならない。それは自分がそこにいる理由を理解し、受け入れることに近い」。なぜか。本誌H・アラン・スコットがファインズに聞いた。

――フレッドのような邪悪な人物を演じることに抵抗はなかったか?

この家父長制的な悪夢の世界に潜む問題を浮かび上がらせる。そのためにこそフレッドは存在する。だから私は彼の堕落に、とことんまで付き合う。ほっとするのは過去を振り返る場面だ。フレッドがそれほど邪悪でなかった時代に戻れるから。

――つまり、フレッドを好きになれると?

フレッドは自分が他者に与える痛みを完全に認識している。ひどい体制の下で自分がどれほどひどい役割を果たしているかを理解している。

――ギレアドと現実世界との類似点は?

シーズン2には議会を襲撃する計画の話があった。それが今年1月に現実になって、私たちの民主主義がいかに脆弱かを思い知らされた。

――ドラマのファンからはどんな反応がある?

私をフレッドと同一視して毛嫌いする人もいる。でも、作品中の名文句を引用してくれる人も多い。まあ、反応はさまざまだ。幸いにして、まだ路上で物理的な攻撃を受けたことはないね。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円急落、日銀が追加利上げ明確に示さず

ビジネス

米国株式市場=続伸、ハイテク株高が消費関連の下落を

ワールド

ベネズエラ情勢巡る「ロシアとの緊張高まり懸念せず」

ビジネス

米11月中古住宅販売、0.5%増の413万戸 高金
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中