最新記事

韓国映画

カン・ハンナ「私のおすすめ韓国映画5本」とマブリー愛、韓国映画が面白い理由

2021年5月5日(水)12時20分
カン・ハンナ(歌人・タレント・国際文化研究者)

2000年代になり、韓国映画は変わった。『殺人の追憶』は560万人以上の観客を動員し話題になったが、そうした韓国ブロックバスターの「仕組み」が作られた。

ポイントは、社会性があること。1000万人以上を動員する映画を分析したリポートが韓国で出ていて、その中でも「リアリティー」や「社会性」が特徴として挙げられている。社会性があるとメディアが取り上げやすいし、観客の共感も得やすい。

ポン・ジュノ作品もそうだ。彼は『パラサイト』も素晴らしいが、『殺人の追憶』がその原点になったのではないか。

音楽の場合、韓国ではグローバル戦略として欧米に合わせて作るが、ポン・ジュノ監督は韓国のオリジナリティーを重視する。彼はこう言っている。「最も韓国らしいものが、最も世界的な作品になる」

Klockworx VOD-YouTube


チャン・フン監督の『タクシー運転手 約束は海を越えて』も、実話を基にした社会性のある映画だった。人口5200万人の国で、観客動員数は1200万人。

こんなに大ヒットしたのはなぜか。2017年になって、1980年の民主化運動、光州事件をテーマにした映画が公開されたのはなぜか。

理由は、朴槿恵(パク・クネ)元大統領の弾劾にある。2016年末に弾劾訴追され、2017年3月に逮捕された。この弾劾と公開時期が一致している。

1980年――。光州は封鎖され、ソウルから行けない。そこで取材に行きたいドイツ人記者がソウルのタクシー運転手に、10万ウォンの大金を渡すから、光州まで行ってくれと頼む。お金を稼ぎたいだけだった運転手はその中で、軍事独裁政権がデモを弾圧し、民衆を殺すのを目撃する。

社会を変えるのは私たち民衆だと描き、正義のメッセージを強く打ち出した映画だった。

私はいま韓国映画をテーマに博士論文を書いている。そこでも現代の韓国映画の特徴として示しているのが、人々の記憶を再生産する役割。

『タクシー運転手』は今の時代に向けて、民主化運動の物語を残し、みんなの記憶を引き出す役を担った。そんなところも日本の人たちに理解してもらえたらと思う。

リアリティーを追求し、完全なフィクションよりは、ファクトとフィクションを混ぜた作品が最近は主流になっている。2017年公開の『犯罪都市』も、実話を基にしてヒットした映画だった。

ただしこの作品、『殺人の追憶』と違い、基になった事件はあまり知られていない。2004年と2007年の2回、ソウルのチャイナタウン――複雑な歴史の中で朝鮮族の人たちが集住するようになった地区――で起こった犯罪組織と警察の抗争を、1つにまとめて映画化したもの。

私はこれを観て、あまりの残酷さに「大丈夫か韓国?」「これは夢に出るでしょ!」と衝撃を受けた。公開当時、中国人や朝鮮族への差別につながるのではないかという意見も出たほどだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国外相、キューバ外相と会談 国家主権と安全保障を

ビジネス

マレーシア、今年の成長予測上げも AIブームが後押

ビジネス

英建設業PMI、1月は46.4に上昇 昨年5月以来

ワールド

ドイツ企業、政府の経済政策に低評価=IFO調査
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 3
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新世論調査が示すトランプ政権への評価とは
  • 4
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 5
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 8
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 9
    アジアから消えるアメリカ...中国の威圧に沈黙し、同…
  • 10
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 7
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中