最新記事

韓国映画

はるな愛「私のとっておき韓国映画5本」 演技に引き込まれ、究極の愛について考える

2021年5月3日(月)13時30分
はるな愛

<韓国にゆかりのある4人がおすすめする笑って泣けて、心を揺さぶられる韓国映画。100回以上の訪韓経験があり2013年から韓国観光名誉広報大使を務める韓国通のはるな愛さんがおすすめする韓国映画とは?>

1.『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)
2.『7番房の奇跡』(2013年)
3.『いつか家族に』(2015年)
4.『百万長者の初恋』(2006年)
5.『ビューティー・インサイド』(2015年)

ゾンビ映画はアメリカのものなどを含めていろいろと見てきたが、『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)のゾンビはとにかく演技が素晴らしい。例えば床からはっと起き上がるときの体の動きがすごくて、画期的といっていいくらい。

ゾンビものは怖くて見たくないという人もいるかもしれない。でもこれは怖いだけの映画ではなくて、家族愛や親子愛、友情が本当のテーマ。人生の最後に何をすべきか、何を守るべきかを考えさせられる。もう苦しくなるくらいで、最後は泣いてしまった。

例えば、家族は些細なことで距離が生まれたり、けんかしたりするが、今そうした状況にある人にはぜひ見てもらいたい。自分が悪かったり言い過ぎたことを反省したり、自分にとって誰が頼りになる人なのかが見えてくる、そんな映画だった。いろいろな意味で、世界から注目される韓国映画の技術やレベルの高さも感じさせる衝撃の1本だ。

『新感染 ファイナル・エクスプレス』コン・ユ

『新感染 ファイナル・エクスプレス』のコン・ユ © EVERETT COLLECTION/AFLO

韓国には葬儀に「泣き屋」がいるように、本当に悲しむときは徹底的に、みんなで悲しもうという感覚があるのではないか。そうした心の動きが、演技に出ている気もした。

演技力の高さは多くの韓国映画に通じるものだが、なかでも『7番房の奇跡』(13年)は必見だと思う。知的障害があり、無実の罪で投獄された主人公を演じたリュ・スンリョンがさまざまな感情に引っ張られながらもぶれずに演じ続け、なおかつ怪しさ、怖さ、冷たさ、優しさなど、人間のあらゆる側面を感じられる演技をする。面白くて切なくて、とても引き込まれる。

雑居房の中で、主人公の幼い娘をみんなで育てるという「お節介」もいい。お節介は今の日本では忘れられたり嫌がられたりするが、実は災害など大変な時に力になってくれるもの。この映画を見ると、「身近な他人こそ、とても有難い存在」と思えるのではないか。そして、全ての笑いの裏に涙がある。面白くて悲しい、見事にそんな仕上がりになっている。

想像もしない展開が

おすすめの3作目は『いつか家族に』(15年)。大好きなハ・ジョンウが監督と主演をしている。今は社会において男女のボーダーラインが薄れている時代だが、この映画では昔ながらの男性像、女性像が描かれている。

舞台は朝鮮戦争休戦直後の1953年で、テーマは「血」。家族の血のつながりの話で、お金を稼ぐため病院に「血を売る」ことが物語のキーになっている。残酷な表現があったり、乱暴な言葉が飛び交ったりして驚かされるところもあるけれど、人々の生きる力とたくましさを感じた作品。血がみなぎっているから生きていける、でもその血を奮い立たせるのは自分自身の気持ちなんだと思わされた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米ロ首脳会談の実現に暗雲、ロの強硬姿勢が交渉の足か

ワールド

カナダ首相、鉄鋼・アルミ貿易巡る対米協議の行方に慎

ビジネス

アングル:難しさ増すFRBの政策判断、政府閉鎖によ

ビジネス

米国株式市場=まちまち、堅調な決算受けダウは200
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない「パイオニア精神」
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 6
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 7
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    増える熟年離婚、「浮気や金銭トラブルが原因」では…
  • 10
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中