最新記事

映画

映画に専門家の監修が必要な理由 科学でエンタメはこんなに豊かになる

What Science Can Bring to Movies

2021年4月8日(木)17時57分
サム・アダムズ
映画『パーム・スプリングス』の一場面

リゾート地にやって来たナイルズ(左)とサラはタイムループにはまる PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE. PHOTO BY HULUーSLATE

<タイムループを描く『パーム・スプリングス』 その科学アドバイザーが語る、専門家が監修する意味>

主人公とその恋人が新たなチャンスを手にして失敗を乗り越える──そんなラブコメディーは世の中にあまたある。だがマックス・バーバコウ監督の『パーム・スプリングス』(日本公開は4月9日)では、結婚式に招かれた男女(演じるのはアンディ・サムバーグとクリスティン・ミリオティ)がタイムループにはまり、同じ一日を何度も生きる羽目になる。

ループから2人を脱出させるには自然科学の助けが必要。そこで大きな役割を果たしたのが科学アドバイザーを務めた南カリフォルニア大学教授のクリフォード・ジョンソンだ。映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』でもタイムトラベルの設定に参加したジョンソンにスレート誌のサム・アダムズが話を聞いた。

――どんないきさつで本作に参加することになったのか。

最近では(米国科学アカデミーが映画やテレビ業界と専門家の橋渡しのために立ち上げた)「科学と娯楽の交流」プログラムが大いに役に立っている。「科学の専門家に知り合いがいない」とか、「大事な研究をしている専門家の手を煩わせるのは気が引ける」と言う人は多い。でも専門家の中にも、そういう立ち位置から一歩踏み出して専門家も喜んで手を貸すと知ってもらいたい人はいる。

――製作側が専門家のアドバイスに二の足を踏む理由の1つは、ストーリーを壊されてしまうことへの懸念だ。科学的な正確さはなぜ大事なのか。

私は正確さといった言葉をなるべく使わないよう気を付けている。「科学警察」みたいになってしまうからだ。科学も音楽やその他のアートといった文化の一部だというのが私の考えだ。だから科学は娯楽を含む生活のあらゆる側面に関わっているべきだ。

科学と関わるには特殊な技術や知識が必要だとか言っていては、社会全体の科学のレベルが下がってしまう。一市民として判断を下すための科学的な思考の方法とか、さまざまな事象が私たちの生活に影響を与えている仕組みだとか、科学という名の対話に私たちみんながどのように関わるべきかといったテーマは今、非常に重要になっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、鉄鋼関税50%に引き上げ表明 6月4日

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中