映画に専門家の監修が必要な理由 科学でエンタメはこんなに豊かになる
What Science Can Bring to Movies
リゾート地にやって来たナイルズ(左)とサラはタイムループにはまる PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE. PHOTO BY HULUーSLATE
<タイムループを描く『パーム・スプリングス』 その科学アドバイザーが語る、専門家が監修する意味>
主人公とその恋人が新たなチャンスを手にして失敗を乗り越える──そんなラブコメディーは世の中にあまたある。だがマックス・バーバコウ監督の『パーム・スプリングス』(日本公開は4月9日)では、結婚式に招かれた男女(演じるのはアンディ・サムバーグとクリスティン・ミリオティ)がタイムループにはまり、同じ一日を何度も生きる羽目になる。
ループから2人を脱出させるには自然科学の助けが必要。そこで大きな役割を果たしたのが科学アドバイザーを務めた南カリフォルニア大学教授のクリフォード・ジョンソンだ。映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』でもタイムトラベルの設定に参加したジョンソンにスレート誌のサム・アダムズが話を聞いた。
*
――どんないきさつで本作に参加することになったのか。
最近では(米国科学アカデミーが映画やテレビ業界と専門家の橋渡しのために立ち上げた)「科学と娯楽の交流」プログラムが大いに役に立っている。「科学の専門家に知り合いがいない」とか、「大事な研究をしている専門家の手を煩わせるのは気が引ける」と言う人は多い。でも専門家の中にも、そういう立ち位置から一歩踏み出して専門家も喜んで手を貸すと知ってもらいたい人はいる。
――製作側が専門家のアドバイスに二の足を踏む理由の1つは、ストーリーを壊されてしまうことへの懸念だ。科学的な正確さはなぜ大事なのか。
私は正確さといった言葉をなるべく使わないよう気を付けている。「科学警察」みたいになってしまうからだ。科学も音楽やその他のアートといった文化の一部だというのが私の考えだ。だから科学は娯楽を含む生活のあらゆる側面に関わっているべきだ。
科学と関わるには特殊な技術や知識が必要だとか言っていては、社会全体の科学のレベルが下がってしまう。一市民として判断を下すための科学的な思考の方法とか、さまざまな事象が私たちの生活に影響を与えている仕組みだとか、科学という名の対話に私たちみんながどのように関わるべきかといったテーマは今、非常に重要になっている。