最新記事

ジョンのレガシー

ジョン・レノンが暗殺の直前に語った家族と反戦とビートルズ【没後40周年特集より】

2020年12月23日(水)11時00分
本誌米国版編集部

NW_SAI_11.jpg

キッチンでのジョンとショーン(1979年)PHOTOSHOT/AFLO

――音楽から完全に離れるのはつらくなかった?

ジョン 最初はつらかった。でも音楽的には、僕の頭はごちゃごちゃだったんだ。74年のアルバム『心の壁、愛の橋』にそれがよく表れている。あれは半分病気の器用な男が作ったものだ。インスピレーションもなく、苦しそうな雰囲気がにじみ出ている。自分の頭の中の騒音のせいで、音楽が聞こえなくなっていた。でも、そこに背を向けると、また聞こえてきた。木の下で白昼夢を見ていなかったら、木から落ちるリンゴが何を意味するのかを思いつかなかったニュートンみたいにね。そういうのが生きがいだ......5年に1度、頭にリンゴが落ちてくることに喜びを感じている。

――音楽を聞くのもやめた?

ジョン 聞くのはほとんどクラシックか(公共の場で流れている)BGMくらいかな。他の人の作品には興味ないんだ。感動を得るもの以外はね。今はもう(ディスコクラブの)スタジオ54や、それ以外のロッククラブに通わなくていい栄光に浴している。その質問は、ピカソに「最近、美術館に行った?」と聞くようなものだ。

――アルバムづくりを再開したのはなぜ?

ジョン 主夫のくせして、仕事をしたくなったのさ。10月9日で僕は40歳に、ショーンは5歳になる。そろそろ息子に、「パパはほかのこともできるんだ」ってところを見せたくなった。ショーンは驚くだろう。この5年間は、まともにギターに触れたこともないんだから。去年のクリスマスに、近所の人がショーンに「イエロー・サブマリン」を教えてね、家に帰ってきたショーンがいきなり、「パパはビートルズだったの?」って聞くんだ。僕は「うん、まあね」って答えた。

――『ダブル・ファンタジー』をヨーコと共作にした理由は?

ジョン ジョンとヨーコで演じる劇みたいなものだからね。嫌なら見るなってこと。あるいは(笑いながら)牛とチーズの関係かな! ヨーコと一緒にいることで、初めて僕は完全になる。彼女がそこにいなかったら歌いたくない。僕たちは互いにスピリチュアルなメンターだ。ビートルズをやめて、最初は「もうポールやジョージやリンゴの言うことに耳を傾けなくていいんだ」と思うだけでうれしかった。でも、一人きりで歌うのは退屈だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中