最新記事

ジョンのレガシー

ジョン・レノンが暗殺の直前に語った家族と反戦とビートルズ【没後40周年特集より】

2020年12月23日(水)11時00分
本誌米国版編集部

――どうして5年も?

ジョン 子供を授かるまでに時間がかかったからね。ずっと息子ショーンのそばにいてやりたかった。最初の息子ジュリアン(母親は前妻シンシア)の成長は見守ってやれなかったからね。今や17歳の男になって、電話でオートバイの話をしているよ。僕は読書家なんだ。主に歴史書や考古学、それに人類学の本を読むんだけど、欧米以外の文化では、子供は2歳になるまで母親の背に負われて育つところもある。ほとんどの学校は監獄みたいなものだ。子供の考えは広く開かれているのに、それを狭めて教室で競争させるなんてばかげている。最初はショーンを幼稚園に入れたが、息子を邪魔者扱いするのは変だと気付いてからは、家に置いて育てた。5歳の息子を世話してあげないと、10代になってからその倍の世話をしなければならなくなる。すごいツケだ。

――ポール・マッカートニーによれば、隠遁生活はあなたの究極の夢だったとか。

ジョン 何のことだかさっぱり分からないね。ポールは僕が何を知っていたか全然知らない。彼と最後にちゃんと話したのは10年も前だから。僕たちは互いのことは何も知らない。2年ぐらい前、彼が突然訪ねてきたときは、こう言ってやった。「おい、先に電話ぐらいしてきたらどうだ。こっちは今日も赤ん坊の世話でくたくたなんだ。よくものんきにギターなんか抱えて、いきなり人の家を訪ねてこれるもんだな!」

――今の典型的な一日は?

ジョン 銀行とか交渉とか、外のやりとりは全てヨーコに任せてある。僕は主夫になった。立場が逆転したコメディアンみたいなものだ。(上品ぶった感じで)「あなた、今日の仕事はどうだった? カクテルでもいかが? スリッパとシャツがまだクリーニングから戻ってきてないの」とか言ってね。世界中の主婦の皆さんのお気持ち、今ではよく分かりますよ! 僕の一日はショーンの食事のことで頭がいっぱい。「ショーンに食事制限をし過ぎているかな?」とかね(レノンとヨーコはこのころマクロビオティックの食生活を続けていて乳製品や酒や肉類を控えていた)。「ヨーコが帰ってきたらビジネスの話をするのかな」とかも(考える)。金には困らない主夫だけど、それでも(何もしないことはなくて)家族へのケアには事欠かないよ。

――ヨーコ、どうしてビジネスを引き継ごうと考えた?

ヨーコ 新しいアルバム(『ダブル・ファンタジー』)に「クリーンアップ・タイム」というジョンの曲があるんだけど、まさに私たちのために作った曲。(ビートルズが所属していたレコード会社の)アップルと、そこの弁護士や経営者とつながっていることで、私たちはお金の面で全然独立していなかった。お金をいくら持っているのかも知らなかった。というか、今も知らない!

私たちが持っているアップルの株を売ろうとしているのだけど、それは私たちのエネルギーをほかの事に注げるようにするため。みんなは株や石油に投資すればとアドバイスしてくれるけど、私たちは正しい行動と思えなかった。投資するのは、私たちが愛しているものじゃないと。例えば牛。インドでは聖なる動物。(複数の)家を買ったのは実用的な理由から。ジョンはダコタハウスでの暮らしに息が詰まりそうになっていたし、ホテル生活も煩わしい。改修を必要としていた歴史のある建物だったので選んだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相、中国首相と会話の機会なし G20サミット

ワールド

米の和平案、ウィットコフ氏とクシュナー氏がロ特使と

ワールド

米長官らスイス到着、ウクライナ和平案協議へ 欧州も

ワールド

台湾巡る日本の発言は衝撃的、一線を越えた=中国外相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 5
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中