<コロナ禍の今、生活者の価値観は変化し、ファッション業界も経験したことのない大きな課題に直面している。しかし洋服どころではない空気が醸成されても、ファッション業界に未来はあると、ユナイテッドアローズ創業者の一人、栗野宏文氏は言う。消費はどこに向かいつつあるのか? 答えは「社会潮流の中」にある>

20世紀的価値観が揺らぎ、「モノ離れ」が進み、「アパレル危機」の最中にあると言われるファッション業界は、新型コロナウイルスの影響でさらなる打撃を被っている。

「コロナ後」に訪れる新しい世界において、ファッション業界、そして消費はどのような方向に向かいつつあるのか?

あるいは、もっとシンプルに「次のトレンドは何か?」といった関心、さらには「そもそもトレンドとは何か? それは今でも意味あるものなのか?」という根源的な問い――。

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政治経済・音楽・映画・アートから国内外の情勢までを投影した時代の潮流を捉えるマーケターとしても活躍してきた栗野氏は、このたび『モード後の世界』(扶桑社)を上梓。同書で、ファッション近代史を通して日本のファッションの特異性と面白さを紐解きつつ、ファッション業界が向かうべき道を提示した栗野氏に、コロナ後のファッション業界と消費について寄稿してもらった。
(ニューズウィーク日本版ウェブ編集部)
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リアリティーの追求が僕のマーケティング

ユナイテッドアローズの栗野です。ファッション小売業でクリエイティブ・ディレクションを生業としています。クリエイティブ・ディレクションとは、春・夏や秋・冬というシーズン括りで、ファッションの視点で会社やブランドが進むべき方向の舵取りをする仕事です。

僕はファッションやマーケティングを専門に学習してはいません。全てを現場で学びつつ、本業に還元してきました。端的に言えば、僕の仮説や理論の構築は"実感"から得たものやさまざまな当事者とのコミュニケーションによって生成されています。

"リアリティー"の追求の結果が、僕のマーケティングであり、ディレクションです。ただし"実感"が"私感"で固まらないためにも"他者の息遣い"を嗅ぎ取ること、そこに寄り添う努力を続けてきました。それが僕のマーケティングであり、結果として捉えた"社会潮流"です。

よく「次は何が流行りますか?」ということを聞かれますが、流行は"つくるもの"ではなく、人々が今のリアルな生活のなかで何を求めているか、その"社会潮流"の結果です。この社会潮流分析が、僕がチームと共に構築してきた"ディレクション"の根幹を成しています。

そして、現在の(あるいは今後数年間の......)社会潮流を決定する因子は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)であることは間違いないでしょう。

では、このCOVID-19禍のもとで、ファッション業界、そして消費はどのような方向に向かいつつあるのか? それを直近の具体例を見ながら分析したいと思います。

百貨店やそれに向けたブランドは商品企画的にも販売体制的にも旧態依然過ぎた