最新記事

エンターテインメント

ハリウッドとエンタメ業界を直撃した最悪のコロナ危機

The Hit to Hollywood

2020年4月21日(火)19時00分
ポール・ボンド(カルチャー担当)

トム・ハンクス夫妻(左下)は感染、『ブラック・ウィドウ』(左上)や『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』(右)は公開延期、テーマパークは閉鎖に PHOTO ILLUSTRATIONS BY GLUEKIT; ROBERT MACHADO NOA-LIGHTROCKET/GETTY IMAGES, P. LEHMAN-BARCROFT MEDIA/GETTY IMAGES, PG/BAUER-GRIFFIN-GC IMAGES/GETTY IMAGES

<全米の映画館の80%以上が閉鎖、新作映画のスケジュールもメチャクチャに>

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、ドナルド・トランプ米大統領が国家非常事態を宣言したのは3月13日。アメリカのエンターテインメント業界では、その直後から状況が急激に悪化した。

例えば当日の朝、CBSの人気長寿番組『ジャッジ・ジュディ』の撮影現場では「ミニ暴動」が発生した。同社幹部が従業員に自宅待機を求めるメールを送っていたにもかかわらず、プロデューサーが出社を要求したためだ。

「誰もが怒鳴り合っていた」と、騒動を目撃したあるスタッフは言う。3日後、『ジャッジ・ジュディ』は放送中止になった(CBSの広報担当はコメントを拒否)。

その数日前には、オーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』の審査員でコメディアンのハウイ・マンデルが、防護服とガスマスクを着用して収録に現れた。その後、トム・ハンクスとリタ・ウィルソン夫妻のようなセレブの感染も相次いでいる(2人は既に回復)。

全米6000館の映画館は80%以上が休館。バスケットボール、野球、アイスホッケーといった人気プロスボーツはシーズンを中断または延期した。テーマパークは閉鎖され、コンサートやブロードウェイのショーは中止。一部の映画は世界中で公開が延期され、100以上のテレビ番組も制作を中断している。

ダメージの規模は不明

この業界は過去に経験したことのない危機に直面している。「エンターテインメントは多くの人々との接触を伴うため、最も打撃を受ける主要産業の1つだ」と、米シンクタンクの経済・政策研究センターのエコノミスト、アイリーン・アップルボムは言う。

既に映画館チェーンの株価は大打撃を受けている。AMCシアターズは年初来で約50%、シネマークUSAは約70%ダウン。映画のスクリーンにCMを流すナショナル・シネメディアの株は約60%、大型スクリーンを運営するIMAXの株は約50%下落した。

あらゆる種類のエンターテインメント企業が損失処理に追われるのは確実だが、具体的な規模はまだ不明だ。大手会計事務所プライスウォーターハウスクーパーズの予測では、2020年上半期のメディア・エンターテインメント部門全体の売上高は全世界で2兆3200億ドル、前年比でわずか1%増にとどまる見込み。格付け会社S&PグローバルはAMC、シネマーク、ライブ・ネーション・エンターテインメント、ウォルト・ディズニー、バイアコムCBSの親会社ナショナル・アミューズメントなど、エンターテインメント企業20社以上の社債格付けを引き下げた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米最高裁、教育省解体・職員解雇阻止の下級審命令取り

ワールド

トランプ氏、ウクライナに兵器供与 50日以内の和平

ビジネス

米国株式市場=小反発、ナスダック最高値 決算シーズ

ワールド

ウへのパトリオットミサイル移転、数日・週間以内に決
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中