最新記事

映画

韓国ネットの闇に晒された女優チョン・ユミと映画『82年生まれ、キム・ジヨン』

2019年11月27日(水)20時10分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

「この映画を作りたい、共有したいという気持ちの方が勝り、ネットの批判は気にならなかった」と語る女優チョン・ユミ YTN/YouTube

<ネット上で理不尽な誹謗中傷を受けるのはソルリやク・ハラのようなアイドルだけではない>

今、韓国で有名人らがレビューや写真をSNSにアップすると、批判と応援、両方のコメントで炎上してしまう小説がある。それが『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著)だ。本国では2016年10月に刊行され、その後100万部を超えるベストセラーに。日本でも2018年12月に翻訳出版され韓国文学としては異例の14万部ものヒットとなっている。

しかし、この本は有名人が紹介するとたちまち炎上する。例えば、女優ソ・ジヘがインスタグラムにこの本の写真をアップしたところ、コメント欄は誹謗中傷の悪質な書き込みだらけとなり、投稿を削除する事態となった。これに対し、女優キム・オクビンが応援コメントを書き込んだが、炎上は彼女にまで飛び火した。

newsweek_20191127_195309.jpg

女優ソ・ジヘがインスタグラムにこの本の写真をアップしたところ、コメント欄は誹謗中傷の悪質な書き込みだらけに YTN / YouTube

こうしたアンチ派からの攻撃はSNS上だけには留まらず、ガールズアイドルグループ「レッド・ベルベット」のアイリーンは、ファンミーティングのMC中、最近読んだ本として『82年生まれ、キム・ジヨン』を紹介したところ、一部過激なファンが「アイリーンのフェミニスト発言に失望した」と、彼女の写真を破り、グッズを火で焼いた写真をネットにアップするといった攻撃を受けた。

今や社会現象ともいえる、この『82年生まれ、キム・ジヨン』だが、そもそもなぜここまで注目を集めたのか?

1982年生まれ、現在30代後半の主人公の名前はキム・ジヨン。この名前はこの世代で一番多い女子の名前だという。物語は、どこにでもいる一般的な韓国女性の淡々と日常を描きながらも、女性が気付かないうちに受けている性差別を浮き彫りにしている。

生きているうちにいつの間にか「自分は女性だから......」と違和感すらもたずに受け入れ、当たり前だったことが、実はまったく正当な理由がない理不尽なことではないかと考えさせられる。このフェミニズム的な内容に、主人公と近い20〜30代の女性から多くの共感の声が上がった。だが、その一方で保守派の男性たちなど一部の人々からはアンチの声も上がるようになり、いつしか両者が対立する構図になってしまった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:屋台販売で稼ぐ中国の高級ホテル、デフレ下

ワールド

メラニア夫人、プーチン氏に書簡 子ども連れ去りに言

ワールド

米ロ首脳、ウクライナ安全保証を協議と伊首相 NAT

ワールド

ウクライナ支援とロシアへの圧力継続、欧州首脳が共同
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に入る国はどこ?
  • 4
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 5
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 6
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 7
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「デカすぎる」「手のひらの半分以上...」新居で妊婦…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「軍事力ランキング」で世界ト…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 7
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 8
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中