最新記事

女性問題

美容大国の韓国でミスコン大炎上 審査廃止でも水着映像上映、伝統衣装をミニスカに

2019年7月29日(月)20時21分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

伝統衣装をコルセットやミニスカにして炎上


「伝統衣装ではなく下着?」「伝統への冒涜」と議論になったミス・コリア MBC NEWS / YouTube

このようにさまざまな議論を巻き起こした今年の韓国の"ミスコン"だが、一番大きく取り上げられ波紋を呼んだのが「韓服コルセット衣装」問題だ。コンテストの合間に昨年の受賞者が登場するコーナーが設けられ、そこで着ていた韓国の伝統民族衣装である韓服(ハンボク)が非難を浴びている。

日本でも韓国の韓服はチマチョゴリと呼ばれ有名である。そのイメージは、ふんわりとしたロングのスカートで上着は小さく袖も曲線を描くように女性らしさを表して作られた衣装である。ところが、ミス・コリア受賞者が着ていた韓服は、コルセットのような型であったり、スカートがミニスカートになっていて過度にセクシーなものだった。水着審査はなくしたものの、女性が性的なイメージを強調するような衣装を身に着けて登場すること自体、「性の商品化」という根本的な部分は何ら変わっていないのではないかという声が上がっている。

この韓服のデザイナーは、インタビューに対して「ショーの衣装として見てほしい」と語り、伝統を壊したり、女性をエロティックに見せたりする意図などはなかったとしている。しかし、この数点のデザインのうち、特にコルセットは窮屈で動きにくく着用に時間がかかる。ファッションにおいて女性の自立や女性の社会進出と共に廃れていったコルセットは、ある意味男性優位社会のアイコン的なものともいえる。そう考えると、今回ショーで使われた韓服はデザイナーの発言とは逆を行っているようにも見える。

もちろん、"ミスコン"に関する議論は韓国だけのものではなく、日本でもミスコンテストの衣装が物議を醸した事例がある。2009年のミスユニバース世界大会の日本代表の衣装が、ピンクの下着が丸出しの超ミニ着物だったのだ。さらにガーターベルトまで付いており、世界から「まるで娼婦みたい」と非難が上がった。それを受け、本選大会の舞台ではスカートが多少長くなって下着は見えない長さでの登場となった。

炎上の背景にはMeToo運動が?

韓国では、数年前にハリウッドから拡がった#MeToo運動も盛んで、女性が性差別に対して声を上げる事例が増えた。大きく動き出すきっかけとなったのは、2016年ソウルの江南駅女性殺害事件だった。犯人の男は「女性に見下されてる気がする」と、相手が女性だったというだけで被害者を刃物で刺して殺害した。犯行理由が明らかになると「これは女性嫌悪"ミソジニー"であり、女性蔑視が引き起こした殺人だ」と、韓国内外のニュースで大きく取り上げられた。

また、2018年日本でも翻訳され話題となったチョ・ナムジュの小説『82年生まれ、キムジヨン』がヒットするなど、今まで皆がなんともない、当たり前と思っていたことが、実は女性というだけで受けている不平等な事柄だったことを、韓国の女性たちは今改めて感じて、声を上げ始めている。今回のミス・コリアをめぐる一連の炎上騒動も、こうした女性を取り巻く理不尽な社会への異議申し立ての表れといえるだろう。



20190730issue_cover200.jpg
※7月30日号(7月23日発売)は、「ファクトチェック文在寅」特集。日本が大嫌い? 学生運動上がりの頭でっかち? 日本に強硬な韓国世論が頼り? 日本と対峙して韓国経済を窮地に追い込むリベラル派大統領の知られざる経歴と思考回路に迫ります。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

欧州・ウクライナの米提案修正、和平の可能性高めず=

ワールド

ウクライナ協議は「生産的」、ウィットコフ米特使が評

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、今後数カ月の金利据え置き

ビジネス

再送-〔アングル〕日銀、追加利上げへ慎重に時機探る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 7
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 8
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 9
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中