最新記事

映画

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』撮影現場で見た監督のこだわり

2019年6月7日(金)17時00分
イソガイマサト

さらに、モスラに詳しいモナークの考古人類学者チェン役で日本でも人気のある『グランド・マスター』(13)などの中国人女優チャン・ツィイーが参加し、本作では大きな決断を迫られる芹沢博士を渡辺謙が熱く演じる魅惑のキャスティングが実現しているのだ。

penGodzilla190607-4.jpg

前作より貫禄が増した我らがゴジラ。果たして"彼"は人類の敵なのか、味方なのか? 身体や背びれを美しく光らせるその雄姿がその答えを代弁している。 ©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

そんな超注目作の撮影現場に潜入したのは、一昨年の8月下旬。場所は米・アトランタ。聞くところによると、ハリウッド大作の多くは少し前までカナダのバンクーバーで撮影されていたが、いまはさらに税率が低いアトランタで制作するのが主流になっているのだとか。

というわけで、この日も市街地から車を20分ほど走らせたところにある巨大な家具倉庫を使ったスタジオに向かったのだが、中に入ってそのあまりの大きさに驚いた。移動にカートを使うその広大な敷地の複数のステージには、モナークの基地や南極基地のセットが。脇には巨大な輸送機の実物大の美術(大道具?)が転がり、屋外には怪獣たちの激闘で破壊されたと思われるボストン・レッドソックスのホーム球場"フェンウェイ・パーク"の巨大な瓦礫が散らばっていて、それを見ただけで本作のとてつもないスケールを実感することができた。

penGodzilla190607-5.jpg

孤軍奮闘の渡辺謙。 ©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

絶対に妥協しない、ドハティ監督のこだわり。

この日撮影されていたのは、芹沢やチェンらの乗る潜水艦が海中で何かに激突するくだり。乗組員たちがその衝撃で吹っ飛んだり、物につかまって必死に転倒を避けようとする姿をカメラのアングルを変えながら撮っていくのだが、そのテイク数の多さは渡辺謙が「前作のギャレスも相当だったけれど、マイケルも負けないくらい執念深い」と現場で苦笑いするほど。

そう言いたくなるのも無理はない。何しろ、日中から夜の9時過ぎくらいまでずっとその一連のシーンを撮っていたのだから。だが、それは「僕はソウル(魂)が感じられる芝居を常に俳優たちに求めている」という絶対に妥協しないドハティ監督のこだわりの証し。

「だから、ソウルが感じられるまで何度でもテイクを重ねるし、話し合いもする。本作をただの怪獣映画だと思っているキャストには、『ゴジラ』映画の根底にある精神を徹底的にレクチャーしたよ」

penGodzilla190607-6.jpg

ラドンには日本のオリジナルのラドンの描写が忠実に受け継がれている。高速で飛行するその雄大なシルエット、衝撃波で家々の屋根が吹き飛ぶ驚愕の映像はハリウッド・デビューの名刺代わり!? 本作オリジナルの攻撃スタイルも必見だ。 ©2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

とは言え、スタジオの中は別にピリピリしているわけでなく、心地よい緊張感が漂っている。そんなドハティ監督の現場の印象を、セットの脇で台本を片手にセリフを頭の中に叩き込んでいたチャン・ツィイーが教えてくれた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意

ワールド

国際刑事裁の決定、イスラエルの行動に影響せず=ネタ

ワールド

ロシア中銀、金利16%に据え置き インフレ率は年内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中