最新記事

レゴ

日本でただ1人、レゴ社認定プロの知られざるメリットと悩み

2018年9月11日(火)16時10分
森田優介(本誌記者)

Newsweek Japan

<世界で16人しかいないレゴ認定プロビルダー。どうやってプロになったのか、「ただの1ファン」と何が違うのか、どのような生活を送っているのか......。好きなレゴを仕事にした日本唯一のプロビルダー、三井淳平に聞いた>

LEGOmook_cover200.jpg

※レゴブロック誕生60年を記念し、本誌は特別編集ムック「レゴのすべて」を8月31日に発売。その歴史から製造現場の舞台裏、ミニフィギュア(ミニフィグ)誕生秘話、人気シリーズの紹介まで、本拠地デンマークでも取材を行ってレゴの魅力に迫った。レゴブロックの読者プレゼント、一部書店で先着限定特典キャンペーン(カイのファイヤードラゴン)も実施中。

その会社は、東京の都心から西に少し離れた住宅街にある。オフィスは地下1階の1フロアで、広さは100平方メートル超。窓はほとんどない。

オフィスといっても、一般的なオフィスと違って、背丈ほどの高さの半透明キャスター付き収納ケースや段ボール箱が、やや乱雑に所狭しと置かれている。自由に動ける空間は少なく、他にはデスクが1つとテレビが1台。収納ケースと段ボール箱の中身は、色・種類別に分けられた、おびただしい数のレゴブロックだ。

ここは三井ブリックスタジオ。日本初にして、今も日本唯一のレゴ認定プロビルダーである三井淳平のオフィスである。

三井によれば、レゴブロックの保存状態を良く保つためには地下がいいのだという。また、その場所に居を構えた理由は、高速道路のインターチェンジに近いから。依頼を受けてレゴで作った作品は、国内であればトラックで配送するので、この立地が便利なのだ。

すべてはレゴのため――。それが、世界でわずか16人しかいない認定プロビルダーの1人であり、レゴだけで生計を立てている三井の「工房」だ。

とはいえ、「認定プロビルダー」とはいったい何なのか。レゴ社に雇われるわけではないというが、では「ただの1ファン」と何が違うのか。認定されると、どうなるのだろうか。

(今年8月から大阪・梅田の阪急三番街で展示されている)


中学から作品を発表、タイで声を掛けられた

三井は1987年、兵庫県明石市で生まれた。レゴが大好きで、中学3年生の頃にはすでに小遣いをはたいて海外からパーツを買うようになっていた。

高校3年生で『TVチャンピオン』(テレビ東京系列)の「レゴブロック王選手権」に出場。予選を突破してデンマークで行われた決勝に進んだ(結果は準優勝)。中学生のときから自分のホームページでオリジナル作品を発表しており、それもテレビ出演につながったという。

その後、東京大学に進学するとレゴ部を創設。仲間たちと作った安田講堂を学園祭で展示して話題になる一方、ネットを使って、個人でもレゴ作品を発表し続けた。さらにはレゴブロックを使ったイベントに携わり、依頼を受けてイベントや店舗で展示する作品を制作するなど、活動の場を広げていく。

レゴを使った活動で「東大総長賞」を受賞。そして、東大大学院で材料工学の研究をしていた2011年、プロに認定された。世界で13人目だった。

「嬉しかったですね」と、三井は振り返る。「タイでレゴのイベントをやったときに、デンマーク(レゴ本社)からレゴの担当者が来ていて、その人に『認定ビルダーの制度があるけれど興味はあるか』と声を掛けてもらった。それから、やり取りをして、あとは審査結果を待つだけだった」

三井によれば、レゴ認定プロビルダーは審査の試験があったり、毎年採用枠があったり、大会で選ばれたりするものではない。大きな作品を作った実績やイベントを行った実績などを評価され、推薦されたり、自ら手を挙げたりするのだという。

また、1カ国に1人などと人数が決まっているわけでもなく、その国・地域のマーケット規模も考慮して認定するようだ。現在、レゴのマーケットが大きいアメリカや中国には複数の認定プロビルダーがいる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ウクライナ南部ザポリージャで14人負傷、ロシアの攻

ビジネス

アマゾン、第1四半期はクラウド部門売上高さえず 株

ビジネス

アップル、関税で4─6月に9億ドルコスト増 影響抑

ワールド

トランプ政権、零細事業者への関税適用免除を否定 大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中