最新記事
レゴ

日本でただ1人、レゴ社認定プロの知られざるメリットと悩み

2018年9月11日(火)16時10分
森田優介(本誌記者)

LEGOmookSR180911-2.jpg

三井の名刺にも載せられているホワイトタイガー。四角いブロックで曲線を表現するのがレゴの醍醐味でもある Courtesy of Jumpei Mitsui

年に約10件の依頼を受け、全部ひとりで作る

三井は大学院修了後、大手鉄鋼メーカーに就職している。認定プロビルダーにはなったが、もともとエンジニアを目指しており、レゴビルダーとエンジニアの両方を続けたいと考えていたという。レゴだけで生計を立てることに不安があったのだろうか。

「私の前に認定プロビルダーになった12人は全員、フルタイムでビルダーの仕事をしており、世界的に見れば職業として成り立っていた」と、三井は言う。そのため、やってみなければ分からない面はあるものの、大きな不安はなかったようだ。

そして2015年、専業でやりたいという気持ちの強まった三井は、いよいよレゴで起業。それから3年経った現在、仕事の依頼は多く、全てを受けられないくらいだという。1件の依頼で複数の作品を作る場合もあるが、年間に受ける依頼は10件ほど。それらを全部ひとりで、それぞれ平均1カ月強かけて制作している。

「ただ、私の場合は特殊で、他の認定プロビルダーはアシスタントを雇ってチームで活動している人が多い」と、三井は言う。

確かにそのほうが、より多くの依頼を受けることができそうだ。今後アシスタントを雇う可能性について尋ねると、考えなくもないが......とのこと。「海外にはパソコンで設計をして、それを基にアシスタントに作ってもらうという人もいる。でもそうすると、作品のデザインが似てきてしまい、自分のオリジナリティーを出しづらい」

一方、三井は手描きのスケッチを元に、手を動かしながら考えていくスタイルを取っている。

(今年8月から、東京・池袋で展示されている巨大な「壁画」)


【参考記事】日本のレゴ愛好家はどんな人たちで、何人くらいいるのか?

ブロックを直接レゴ社から買えるようになる

昔は三井も、数多くいる大人のレゴファン(略称AFOL)の1人に過ぎなかった。その頃から依頼を受けて作品を作り、それで対価を得ることはあったし、それは三井だけでなく他の一部のAFOLもそうだ。では、認定プロビルダーになると何が変わるのだろうか。

「いちばん大きく変わったのは、ブロックを直接レゴ社から買えるようになり、パーツの調達が容易になったこと。この色のこのパーツというように、工場に発注できるようになる」

ディープなファンの多いレゴの世界には、パーツ屋と呼ばれるブロックをまとめ売りする業者があり、個人間のパーツ売買も活発に行われている。そのため「お金を出せば手に入るのだが、やはり流通量に限界がある。例えば、特定のパーツを1万ピースとなると、手に入れるのが難しい」と、三井は言う。

とりわけ日本では、海外に比べるとパーツ売買の市場が小さく、海外より流通量が少ないという事情もあるらしい(とはいえ、三井も今でもパーツ屋を利用することがある)。

もう1つの大きな違いは、「レゴ(LEGO)」のブランドを背負って活動できること。レゴ社のウェブサイトには「信頼できるビジネスパートナー」と表記されており、公式と連携してイベントを行うこともある。

こういった利点があり、三井には作品制作の依頼が絶えない。とはいえ、認定プロビルダーであるかどうか以前に、三井が先駆者として積み重ねてきた実績と、多彩な作品を生み出してきた実力が高く評価されているのは間違いない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中