最新記事

監督

スピルバーグ、『フォースの覚醒』エイブラムス監督の胸の内を明かす

伝統を受け継ぎつつ、興行的な大成功も必須というプレッシャーで「J.J.はビビってるよ」と暴露

2015年12月18日(金)16時57分
ライアン・ボート

クールに振る舞ってはいるが 『スター・ウォーズ』最新作の監督を務めたJ.J.エイブラムスにかかる途方もない重圧を、本人が師と仰ぐスティーブン・スピルバーグが代弁 Yuya Shino-REUTERS

 映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のプロモーションが盛んに行われてきたが、J.J.エイブラムス監督はこれまで、落ち着いたクールな姿勢を崩すことはなかった。

 しかし、それはあくまでも公の場でのことだ。エイブラムスが長きにわたって師と仰ぐスティーブン・スピルバーグは、12月13日、エイブラムスは見かけほど気楽に構えているわけではないと明かした。CBSテレビの報道番組「60ミニッツ」で、ビル・ウィテカーのインタビューに答えてのことだ。

「J.J.はビビってるよ」と、スピルバーグは言う。「J.J.にはものすごいプレッシャーがかかっている。ご存じの通り、ディズニーは、ジョージ・ルーカスから(スター・ウォーズの)シリーズの権利を買った分を取り返さなければならないからね」

 ディズニーは2012年、映画製作会社ルーカスフィルムを買収し、それとともに『スター・ウォーズ』のコンテンツに関する全ての権利を手に入れた。支払った額は、桁外れの40億ドルだ。たいていの大作映画は、1億ドルを超える収益をあげて膨大な製作費の穴埋めをしようとするものだが、『フォースの覚醒』の場合、その賭けはとてつもなく大きい。同作の出来不出来は、新時代を迎えたスター・ウォーズの今後の行方を決定づけることになる。

 ディズニーは、同シリーズが永遠に続くことを願っている。エイブラムスにとって、失敗は許されないのだ。それどころか、記録をことごとく打ち破るような大成功を収めない限り、失敗とみなされるだろう。ディズニーが思い描く総収益は、数百万ドルではなく数十億ドルといった規模だ。

「どんなことをしようが、何らかの不満を持つ人が出てくるのはわかっている」と、エイブラムスは「60ミニッツ」で語った。「ヒット作ではないことをほのめかすような数字もきっと出てくるはずだ」

 しかし、エイブラムス監督にとって、数字上の成功よりも大事なのは、これまでに築き上げられたスター・ウォーズの伝統だ。多くの映画監督、とりわけ1977年に「エピソード4」が公開された当時(日本公開は78年)、11歳になろうとしていたエイブラムスと同年代の監督たちにとって、スター・ウォーズは聖書よりも神聖なものだ。そのシリーズをゆだねられたのに、伝統の維持に失敗し、昔からのファンをがっかりさせたとしたら、まさに最悪の事態だ。

 シリーズの生みの親であるルーカスでさえ、「エピソード1~3」の中でやったこと、やらなかったことで、多くのファンから誹謗中傷を受けている。

 エイブラムス監督の仕事のひとつは、そのオリジナル3部作の埋め合わせをすること。それと同時に、その3部作から伝統を受け継ぎ、かつディズニーに膨大な利益をもたらさなくてはいけない。エイブラムスがビビっていたとしても当然なのだ。

<お知らせ(下の画像をクリックすると詳細ページに繋がります)>

starwars_cover120.jpg 好評発売中!
 ニューズウィーク日本版SPECIAL EDITION
「STAR WARS 『フォースの覚醒』を導いた
 スター・ウォーズの伝説」
 CCCメディアハウス


【限定プレゼント】
ルーカスフィルム公認のアーティスト、TSUNEO SANDA描き下ろし本誌表紙の「拡大版豪華ポスター(シリアルナンバー入り)」を限定100名様に!

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は大幅反落、1000円超安で今年最大の下げ

ワールド

中国、ロシアに軍民両用製品供給の兆候=欧州委高官

ワールド

名門ケネディ家の多数がバイデン氏支持表明、無所属候

ワールド

IAEA、イラン核施設に被害ないと確認 引き続き状
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中