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『プチ・ニコラ』愉快な仲間がやって来た

フランスで50年間愛されている人気絵本がおしゃれで温かな映画になった。ローラン・ティラール監督に聞く

2010年10月15日(金)15時43分
大橋 希(本誌記者)

愉快なおとぎ話 ニコラと仲間たちの秘密作戦は成功するか? ©2009 Fidelite Films - IMAV Editions - Wild Bunch - M6 Films - Mandarin Films - Scope Pictures - Fidelite Studios

 59年にフランスで誕生した大人気絵本『プチ・ニコラ』が実写映画化された(日本公開中)。

 ある日、両親の会話を耳にしたニコラは母親に赤ちゃんが生まれると信じ込む。弟が生まれたら自分は大事にされなくなるのではないか? と心配するニコラは仲間たちと一緒にとんでもない作戦に取り掛かるが......。

 60年代のノスタルジックな雰囲気満載の世界で繰り広げられる、ユーモアと温かみあふれる物語に見る人はみんな自分の子供時代を思い出すはず。隅々までこだわりを感じさせる作品を手掛けたのが、ローラン・ティラール監督だ。

――国民的絵本の映画化なんて、考えただけでも大変そうだ。

 それは大きなプレッシャーがあったよ。読者それぞれが心の中にキャラクター像を持っているし、しかもほとんどの人にとってこの本を読んだ経験はそのまま自分の子供時代につながる。

 もし映画化がうまくいかなかったら、人々の素敵な思い出を傷つけることになってしまう。彼らはがっかりするだけでなく、裏切られたと感じるだろう。この大役を果たすには、プレッシャーのことは考えないようにするしかなかった。

――児童文学の映画化では、「大人向けにするか」「子供向けにするか」の選択が難しいと思うが。

 ターゲットはずばり本の読者。といっても、『プチ・ニコラ』を楽しんでいるのは子供なのか、大人なのかを明確に分けるのは難しい。この本は色々なレベルで読むことができるからね。実際、小さな子供たちにはこの本が持つ皮肉なんかは読み取れない。映画も本と同じく、子供にも大人にも分かるものにするのが第一だった。

 ここ10年ほどで、ピクサーのアニメ映画が新しいスタンダードを作ったと思う。大人にも子供に通じる作品を作り上げる彼らのやり方は素晴らしい。私もそれに倣って、原作よりも両親の存在感を強くして2人の関係を複雑なものにした。

――衣装から部屋の内装、外の風景まで色彩のバランスが完璧で、とても印象深かった。

 原作を熟読していた時にすぐ気付いたのは、これは現実世界の話ではないということ。犯罪はなく、暴力もなければ、呪いの言葉さえない世界。解雇も、離婚もない。とてもとても安全で、安定した世界だ。

『プチ・ニコラ』は子供の目線で語られる、一種のおとぎ話。映画ではそのことを視覚的に表現しなければならないから、セットと衣装には力を入れた。「これは映画であって、現実ではない」と伝わるようにしたかった。(ジャンジャック・サンペの挿絵に合わせて)モノクロにすることも考えたが、それはベストの解決法ではないと思ってやめにした。

――ニコラが映画の最後に考え付く、将来の夢が素敵だ。

 原作者のルネ・ゴシニの自伝を読んで、彼が子供のときに「大きくなったら何をしたい」と質問されて、「人を笑わせたい」と答えたことを知った。私が子供の時に考えていたことと同じなのでびっくりしたよ。

 私の祖父はとても話上手で、家族が集まるといつもみんなで、「笑い話を聞かせて」と頼んだ。私は祖父の才能に感心し、彼のようになろうと思っていた。だからゴシニの自伝を読んで、その逸話を映画に使おうと決めたんだ。

――あなたはどんな子供だった?

 西部劇をたくさん見て、カウボーイになることを夢見ていた。10歳で『スター・ウォーズ』を見た日からずっと、ジェダイになることもあきらめていないかも(笑)。

 『プチ・二コラ』で言えば、クロテールとアニャンを合わせたような子供だった。時には「すべてを知っている」小さな紳士で、時には自分の世界に没頭して周りが見えなくなる。それは今も変わらないよ!

――とても楽しい作品だったので、続編も見たいと思った。

 シリーズ化の予定はあるし、物語のアイデアもある。ただ問題は、脚本を仕上げて撮影に取り掛かる頃には、1作目に出演してくれた子供たちが10代になってしまうこと。それでは作品が成立しない。

 プチ・二コラの世界では、登場人物が子供時代の無邪気さ、純粋さを持っていることが不可欠だ。続編を作るには違う役者をキャスティングしなければならないが、そう簡単には決まらないだろうね。

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