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石破首相、自動車メーカーと意見交換 感謝の一方で更なる注文も

2025年07月31日(木)17時29分

 7月31日、石破茂首相は、日本自動車工業会(自工会)の片山正則会長(いすゞ自動車会長)や佐藤恒治副会長(トヨタ自動車社長)らと意見交換した。都内の首相官邸で5月撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)

Tamiyuki Kihara Maki Shiraki

[東京 31日 ロイター] - 石破茂首相は31日、日本自動車工業会(自工会)の片山正則会長(いすゞ自動車会長)や佐藤恒治副会長(トヨタ自動車社長)らと意見交換した。業界側からは日米の関税合意に感謝の声が聞かれる一方、更なる関税引き下げを求める声も出た。

会合にはほかに、日産自動車のイバン・エスピノーサ社長、ホンダ,の三部敏宏社長、SUBARUの大崎篤社長、マツダの毛籠勝弘社長、三菱自動車工業の中村達夫副社長のほか、部品メーカーの幹部らが出席した。

都内にある自動車工業会を訪れた石破首相は冒頭、「(米国との交渉の末)世界に先駆けて数量制限のない関税の引き下げを実現することができた」と成果を強調。「合意内容を日米双方が着実に実施すべく、今後とも米国に対して働きかける」などと語った。

続いてあいさつした片山会長は「国益を守るために交渉を続けていただいた結果、合意に至ったことに感謝申し上げる」とし、「合意によりサプライチェーン全体を含めた日本の自動車産業への壊滅的な影響が緩和された」と述べた。一方で「引き続き更なる関税の低減を含めた米国との未来志向の対話を続けていただきたい」と注文をつけた。

政府は4月以降、赤沢亮正経済再生相を交渉担当に据え、ラトニック米商務長官らトランプ政権幹部らと交渉を重ねてきた。7月22日、日本から米国に輸出される自動車に対する追加関税を25%から12.5%に引き下げ、既存の税率2.5%と合わせて計15%とすることで両政府は合意に至った。

一方、自動車メーカー各社は4月に発動した25%の追加関税を受け、これまでに相次いで米国での値上げを表明している。コスト増を企業努力で吸収したり、生産拠点や物流を見直したりするなどの対策を実施してきたが、競合他社の動向や市場環境などを踏まえ、各社とも値上げに動かざるを得ないのが現状だ。

トヨタ自動車は7月から、通常の価格改定の一環として一部車種を平均270ドル(3万円超)値上げしたほか、三菱自動車は6月中旬から、SUBARUも6月出荷分から値上げを実施。マツダや日産自動車もタイミングを見て値上げを検討している。ホンダは現時点で通常の価格改定だけで関税を価格転嫁しておらず、方針も明言していないが、今後、実質的な値上げに踏み切る可能性がある。

4ー6月期の連結決算では、米国関税の影響により、三菱自動車で144億円、日産自動車では687億円、それぞれ営業損益の押し下げ要因となった。

中小サプライヤーにも影響が及ぶため、各社とも日本での生産水準を維持したい考えだが、トランプ政権の対米投資拡大に応える形で米国での増産にも迫られている。

(鬼原民幸、白木真紀 編集:久保信博)

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