最新記事

キャリア

大企業に派遣で入り、34歳で執行役員になった男が日本企業の「決められない」体質から学んだこと

2021年3月8日(月)19時55分
二宮英樹
ハンコ

zepp1969-iStock.

<最初はアメリカかぶれで、空気も読まなかったが、仕事を円滑に進めるため「根回し2.0」を身に着けた――。学歴もなく、派遣のITヘルプデスクとして日本の大手企業に入り、10年間で最年少執行役員にまで駆け上がった二宮英樹氏がつづる、国内外で役立つ仕事術>

日本企業でグローバル事業に関わる方々の多くが、海外子会社の事業管理、ビジネスパートナーとのアライアンス、海外M&A、事業上のトラブル対応に奮闘している。

学校で学んだ杓子定規の知識だけでは太刀打ちできない。経営企画の中期計画策定のような机上で練り上げる戦略というよりも、むしろ、胆力とともに高い行動力によって生み出される結果が重要視される。

日本人がグローバルのフィールドでリーダーシップを取る上で必要なことは「詰めるチカラ」だと思う。

私が前職で海外案件業務を担当しているときにストレスだったことのいくつかは「決められない」「決めるのに時間がかかる」「決定権のある人間が会議に出てこない」「自分の意見をはっきり言わず、評論ばかりする」「周りに忖度をした発言しかしない」「重要な決断を後回しにする」といった、日本人にありがちなビジネス体質だった。

私は現在、起業して欧米の高度サイバーセキュリティ企業や専門家及び中東欧ハイテク人材のネットワークを通じて企業のデジタル化を支援している。いわばグローバルビジネスのど真ん中で仕事をしているわけだが、こうした日本人のビジネス体質への対処を含め、前職で培った経験がその基盤となっている。

前職――学歴は短大卒、コネも資格もなく、派遣社員として入社した大塚製薬だ。私はそこで10年間、試行錯誤を続けながら働き、34歳で大塚グループの最年少執行役員にまで駆け上がった。

なぜ、そんな出世ができたのか。典型的な日本の組織でどうやって「詰めるチカラ」を身に着け、今に至ったのか。詳しくは拙著『派遣で入った僕が、34歳で巨大グループ企業の役員になった小さな成功法則』(ダイヤモンド社)に記したが、私の経験を参考にしてもらえたらと思う。

派遣のITヘルプデスクから海外案件担当になれたワケ

田舎の高校に通っていたときに音楽にどっぷりハマった私は、音楽への憧れだけで渡米した。語学学校を経て、2年制の短大に通う間になんとかコミュニケーションは取れるようになり、独学で学んだITの知識を活かして、小さなビジネスを始めた。

時は2001年。9.11が起こり、労働ビザ取得の道が閉ざされたので、泣く泣く帰国した。当時の日本は、ITバブル崩壊後の景気低迷期で、学歴も資格もなかった私は、新卒や中途採用として日本の大手企業に正攻法で入ることは難しい。

そこで派遣社員として、大塚製薬のITヘルプデスクで働くことにした。24歳だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調

ビジネス

米フォード、4月の米国販売は16%増 EVは急減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中