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大企業に派遣で入り、34歳で執行役員になった男が日本企業の「決められない」体質から学んだこと

2021年3月8日(月)19時55分
二宮英樹

留学時代に独学で身に着けたITの知識だけが頼りだった。ただ、当時はあまり英語ができる人がいないIT部門の中で、たった一人の海外経験者ということで「二宮に英語の仕事をお願いしよう」と思われたことが全ての始まりだ。

海外からの電話やメールへの対応を一手に頼まれるようになった。留学していたとはいえ、フォーマルなビジネス英語を日常的に使った経験がない当時の自分は、カジュアルな英語表現に加えて、辞書を片手に調べた内容でコミュニケーションに励んでいく。その仕事の中で、海外のスタッフが送ってくる英文メールからさまざまなシーンの言い回しや単語などを見取って真似、海外からの電話でビジネス英語の挨拶を学んだ。

「依頼を受けたら、必ずやり通す」を信条に、依頼された仕事に必死で取り組むうちに、英語を使ったビジネスのコミュニケーションがストレスなくできるようになっていった。

そのうち、海外対応を中心とする契約社員になった。海外のグループ企業を巻き込んだインフラストラクチャ統合や社長直轄プロジェクトなどに取り組んだ。そして30歳になってすぐにIT推進室長補佐に。同時に正社員となり、さらにグローバルのITプロジェクトに参画するようになって、リーダーの役を果たした。

その後、大塚グループにおける「レガシーの壁」を解決すべく、派遣社員で入って10年目の34歳で、グループ事業会社の執行役員IT統括部長に抜擢された。それから3年間奮闘してレガシー問題を解決し、培った人脈を生かして独立に至った。

自分の得意分野だったIT関連業務を極め、依頼された仕事は期待に応えるよう全力で取り組む。ただただ愚直に走り続けた10年があって現在の私がある。

日本のビジネスに必要な「根回し2.0」を学んでいった

その10年間で学んだことがある。派遣社員として働き始めた当時"アメリカかぶれ"がなかなか抜けられなかった。はっきりした物言いをし、空気を読むのが嫌いだった。その結果、社内で衝突することも少なくなかった。

ITヘルプデスクという立場からステップアップし、英語を使って海外案件に関わる仕事が増える。その中で試行錯誤をし、経験を積んで"根回し"や"誰かを立てる"といった、ビジネスをうまく進める方法を身に着けていった。

数年たった頃からは、社外の人と積極的に会う機会を持つようにした。それがこれまでの認識を大きく変えるきっかけとなった。どのように会社内の政治的事情を考慮して行動し、承認プロセスを乗り越えていけばいいかを学び取ることができたのだ。

そうして見つけた方法が、言うなれば「根回し2.0」だ。

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