最新記事

メンタルヘルス

暴露療法は逆効果、不安を自分で断ち切るドイツ発祥の革新的メソッドとは?

2020年5月28日(木)11時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

脳のプログラムを書き換える「テンセンテンス法」

だが反対に、いつも良い気分でいられることを考えていれば、ポジティブな回路が太くなる。意識的にポジティブな思考回路を作り、それを強化することで、ポジティブな思考を手に入れられるということだ。

著者のカウンセリングが高い効果を出しているのも、ここに秘密がある。つらい経験を思い出すことでそれを乗り越える暴露療法など従来の手法では、むしろ新たな不安の回路を作り出すだけで逆効果であり、やればやるほど不安が強化されてしまうという。

「本当に効果のあるセラピーとは、ポジティブな感情を保存するシナプス(ニューロン同士の接合部)をできるだけ早くできるだけ多く作るものでなければなりません」と著者は言う。

ポジティブな脳の回路を作る具体的な方法として本書に紹介されているのが、「テンセンテンス法」だ。「あなたにとって本当に素晴らしい人生とはどういうものですか?」という問いに対して10の文章で回答をすることで、脳のプログラムを新たに書き換える。

その際、「否定を含まない」「すべてをポジティブに」「現在形で」「具体的に」「自力で到達できることを」という5つのルールがある。例えば、「新しい仕事が気に入っていて仲間といるのが楽しい」「カッコいい車を運転しているので、毎日気分がいい」など。

このような10の文章を書き出したら、より早く脳に新たな回路を作るために、ひとつひとつの文章を、五感を使って感じる。つまり、「見る」「聞く」「感じる」「匂いを嗅ぐ」「味わう」に意識を集中させるのだ。これによって、さらに効果的に脳をプログラムできるという。

昔ながらのセラピストが驚く、6~12週間で不安を乗り越える方法

現に大きな不安を抱えている場合には、すぐにポジティブな回答を思いつかないかもしれない。だが、「およそ20分、毎日レッスンすれば、3週間後には今よりもはるかに気分が良く」なると著者は述べている。

そのほか、本書では即効性のあるテクニックも数多く紹介されており、なかにはミッキーマウスなどのキャラクターを用いるユニークなものもある。取り組みやすいものから試すだけでも、数日もすれば明らかに不安が小さくなり、心身に良い影響を及ぼしていることに気づくだろう。

実際のところ、ほとんどの不安は長くても6週間から12週間のうちに完全に乗り越えることができると著者は説明する。それは「昔ながらの療法を用いているセラピストにとっては、今日なお不可能に思えるほどの速さ」だという。


あなたは憧れの人生を生きるために健康になるのではありません。憧れの人生に向かって一歩を踏み出せば、健康になれるのです!(202ページ)

不安に別れを告げる日。それは、自分自身で招くことができる。先行きの見えない今だからこそ、不安を克服する術を知っておくことは、大いに助けになるに違いない。


敏感すぎるあなたへ――
 緊張、不安、パニックは自分で断ち切れる』
 クラウス・ベルンハルト 著
 平野卿子 訳
 CCCメディアハウス

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

202003NWmedicalMook-cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

SPECIAL EDITION「世界の最新医療2020」が好評発売中。がんから新型肺炎まで、医療の現場はここまで進化した――。免疫、放射線療法、不妊治療、ロボット医療、糖尿病、うつ、認知症、言語障害、薬、緩和ケア......医療の最前線をレポート。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB0.25%利下げ、2会合連続 量的引き締め1

ワールド

ロシアが原子力魚雷「ポセイドン」の実験成功 プーチ

ワールド

Azureとマイクロソフト365の障害、徐々に復旧

ビジネス

米中古住宅仮契約指数、9月は横ばい 金利低下も雇用
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理に押し上げた「2つの要因」、流れを変えたカーク「参政党演説」
  • 3
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 6
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 7
    リチウムイオンバッテリー火災で国家クラウドが炎上─…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    怒れるトランプが息の根を止めようとしている、プー…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中