最新記事

メンタルヘルス

暴露療法は逆効果、不安を自分で断ち切るドイツ発祥の革新的メソッドとは?

2020年5月28日(木)11時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

sdominick-iStock.

<不安が募って心身に不調をきたしている人は多いが、つらい経験を思い出すことで乗り越えるといった従来の手法には効果がない、と臨床心理士のクラウス・ベルンハルト。注目を集める「ベルンハルト・メソッド」で行うのは、脳のプログラムの書き換えだ>

新型コロナウイルスの感染拡大によって、社会全体に混乱が生じている。外出自粛や在宅勤務などで生活にも変化を強いられるなか、「この状態がいつまで続くのか」「この先の生活や仕事は一体どうなるのか」といった不安を抱えている人は今も多いだろう。

特に、あらゆる活動が制限される状況にあっては、ストレス解消もままならず、最初は小さな心配事に過ぎなかったものが、気づいたときには大きく膨らんで、深刻な健康問題になってしまう可能性もある。

だが「脳の使い方」を身に付ければ、自らの手で、そうした不安を断ち切ることができるようになるという。それを教えてくれるのが、『敏感すぎるあなたへ――緊張、不安、パニックは自分で断ち切れる』(クラウス・ベルンハルト著、平野卿子・訳、CCCメディアハウス)だ。

この本で紹介されているのは、ドイツでは既にさまざまな実証がなされており、多くの人が重度の不安症から克服しているという革新的な方法だ。臨床心理士である著者の名から「ベルンハルト・メソッド」と呼ばれるが、本書では著者が実際に用いているテクニックを通して、読者自らが実践できるようになっている。

不安の正体は「心の声」、無視し続けると無意識が強硬手段に出る

そもそも「不安」はどこからやってくるのだろうか? 著者によれば、それは私たちの「心の声」だ。

人間の脳の働きには、意識(顕在意識)と無意識(潜在意識)があるが、最新の知見によると、無意識は意識の1万倍も速く情報を処理しているという。つまり、意識よりも無意識のほうがずっと賢いということであり、脳の真の主は無意識ということになる。

その無意識が、私たちに話しかける際に用いるのが「心の声」だ。私たちは「心の声」を通してさまざまなメッセージを受け取っている。頭(意識)では結論が出ていないにもかかわらず、「何となくやめたほうがいい」「やっても大丈夫な気がする」といった場合がそれだ。

無意識からのそうしたメッセージを無視したせいで、大きな代償を支払うことになる人が大勢いる、と著者は言う。無意識は非常に有能なため、あらゆるデータを既に入手しており、それらと経験とを天秤にかけて、素早く(コンマ1秒以下のスピードで)答えを導き出すことができる。だから、無理に自分で考えようとせず、「心の声」に従うのが実は最も賢い方法だ。

【参考記事】欧米で注目を集める「歩くだけ」心理療法、ウォーキング・セラピーとは何か

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調

ビジネス

米フォード、4月の米国販売は16%増 EVは急減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中