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囚人コーチが教える最強の部屋トレ 自重力トレーニングの驚くべき効果とは?

2020年3月24日(火)17時20分
ニック・コリアス

写真はイメージです。 vuk8691-iStock.

<もしも外出禁止でジムに行けなくても問題ない、自重力トレーニングをやればいい――。話題の『プリズナートレーニング』著者が応じた貴重なインタビュー。キャリステニクスとは何か、なぜ優れたトレーニング法なのか(前編)>

映画『300〈スリーハンドレッド〉』に出てくるスパルタ人のような外見を求め、あなたもジムで数え切れないほどの時間を費やしているだろう。

しかし、あなたのトレーニングプログラムがどれほどすごいものでも、ポール・ウェイドはビクともしない。彼、そして本物の戦士たちは、神が与えたもの――体重――だけでそれを手に入れている。

1979年に初めて収監されたポール・ウェイドは、アメリカの中でも特に凶悪な犯罪者たちが集まる監獄を20年以上渡り歩いた男だ。そして、2009年に出版された『Convict Conditioning』(邦訳版『プリズナートレーニング』山田雅久訳、CCCメディアハウス、2017年)と共にこの社会に戻ってきた――私たちのために。

過酷な環境の中で生き抜くためにウェイドがたどり着いたのは、6つの動作(ビッグ6)をやることだった――プッシュアップ(腕立て伏せ)、プルアップ(懸垂)、スクワット、ハンドスタンド・プッシュアップ(逆立ち腕立て伏せ)、レッグレイズ(腹筋を使って脚を上げる動作)、ブリッジ(後ろに向かって脊柱を曲げる動作)だ。それだけ。そこに「正しい知識とバケツ1杯分の決意」さえあればいいらしい。

フィットネスのウェブサイト――このサイトを含む――で紹介されているトレーニングプログラムをスクロールすれば、それで十分じゃないの?と不思議に思うかもしれない。

現代のジムでは、プッシュアップやプルアップは普通、アペタイザー(ウォーミングアップ)かデザート(ハードなトレーニング後の仕上げ)に過ぎない。ウェイドのシステムは、レップ(トレーニングの回数)ではなくステップに焦点を当てることで、プッシュアップやプルアップをメインコースにしたものだ。

「ビッグ6」の各々は10ステップに分かれ、レップ的なゴール基準をクリアすれば次のハードな世界へと進んでいけるシステムになっている。

40レップスのプッシュアップをやり遂げても、あなたがいるのはまだステップ5。それができたらクローズ・プッシュアップ(両手の人差し指を触れ合わせてやるプッシュアップ)をやる権利を獲得する。

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プッシュアップのステップ5となるフル・プッシュアップ(『プリズナートレーニング』81ページ)

このプッシュアップ・シリーズの最終ゴールは、ワンアーム・プッシュアップ(片腕でやるプッシュアップ)だ。それが「マスターステップ」であり、定期的にトレーニングしていれば、誰もがそこへ到達できるプログラムになっている。

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プッシュアップのステップ10、ワンアーム・プッシュアップ(『プリズナートレーニング』91ページ)

2011年に出版された続編『Convict Conditioning 2』(邦訳版『プリズナートレーニング 超絶!!グリップ&関節編』山田雅久訳、CCCメディアハウス、2018年)では、クラッチフラッグ、レスラーブリッジ、指先プッシュアップなどのより複雑な動作が紹介されている。

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クラッチフラッグ(『プリズナートレーニング 超絶!!グリップ&関節編』87ページ)

これら2冊のマニュアルを使って徹底的に説明するだけでなく、ウェイドはそこに、古代ギリシャ人、武道家、囚人、伝説的なストロングマンであるチャールズ・アトラスなどの話を織り込みながら、自重力トレーニング(自分の体重だけを使って行う筋力トレーニング)の歴史を紐解いていく。

「彼らは、釘や樽のような外部の物体に力を解き放つことで自分の強さを見せつけていた」。そして、「その強さは、多くの場合、体重をコントロールすることでつくったものだ」とウェイドは書いている。

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